**

 彼の目の前のホットコーヒーはほとんど黒に近い深い茶色を湛えて、たまにテーブルの揺れに合わせて水面に模様を作っている。


「やっぱり、ギタボはモテるんだ」

私がそう言うと彼は目をぱちくりして、

「ギタボだからモテたのかな? 違うと思うけど」

と反論する。

 モテてる自覚はあるらしい。

 彼は高校1年から大学4年までの間、ロックバンドでギターボーカル(ギタボ)をしていた。

 私が彼と知り合ったのは彼が大学を卒業する直前の頃だ。

 だから、私は彼のライブに行ったことがない。

 ライブに出てる彼は、目の前の彼より格好良く見えるんだろうか。

 ちょっと想像して、想像しきれなくてやめにする。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る