喫茶店にて

折戸みおこ

「それで、君はこれまで何人の女の子に言い寄られたの?」

「うーん、サッカーチームは組めるかな」

目の前の美しい彼はさらっと言った。


 ぬるい暖房が喫茶店のなかで充満している。

 頼んだ飲み物がテーブルの上に置かれた。

 彼はホットコーヒーで、私はアイリッシュコーヒー。

 彼が砂糖やミルクを手に取る雰囲気はない。

 ずいぶんあっさりしているんだな。


「これまでの女の子か。全員で何人だったっけ」

 指を折って数える彼は、どちらかというとなよなよした体躯をしており、白く艶のある肌に真っ黒の髪がマッシュルームカットに揃えられている。

 20代も後半だと言うのに、彼はいつも実年齢より10歳ほど若く見られがちだ。

 指先は12を超えたあたりから曖昧に折ったり戻したりをし始め、しまいに彼は

「顔があいまいな子と、名前があいまいな子がいるな」

と言い出した。

 そんなものなのか。

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