第6話

「あ、あの…山の向こうに家があると聞いたんですけど詳しいことなど知りませんか?」


私は院長との会話の後、二週間ほど街にいることにした。


なぜなら、情報があまりにも少ないからだ。

みんな、山の向こう、と簡単に言うが、見たところ、山は多分富士山よりちょっと低いくらいだった。

しかも、その手前にある森はそれこそ青木ヶ原樹海のように方位磁針が効かないようなところだった。

行き当たりばったりで進んでいれば行方不明になるのも時間の問題。

しかもその小屋が浸剤しているのかも怪しいところだ。


だからと言って公に情報収集したり、大きく動いたら国に見つかり本末転倒だ。

そのため、顔の話は伏せて、服を買ってくれた客に世間話のように吹っかけていた。


そんな感じだったから、得られた情報は少なく、エラルナが持っていた話を合わせても雀の涙だった。


・山の向こうにある

・木で作られた小屋である

・老婆が住んでいると聞いた

・一本杉の麓にある

・山の中にある。


ジョーもエマも一緒に調べてくれたが、なかなか見つからない。


私はごうごうと燃えていた復讐心は今や申し訳なさがかけられ、消えかけていた。


しかし、真実を求め目的を果たす、という信念はいつも忘れなかった。


それに私は牢穴で刑期がわからないまま辛い日々を虐げられたのだから、これくらいの我慢は全然平気だった。


さらに穴での暮らしで私は、正確でたくさんの知識を手に入れたし、知識を効率よく学ぶ方法も得ていたので、私はかなり頭は良くなっていたと思う。比べる相手がいないからよくわからないが。


このようにポテンシャルを強化できたことは私にとって大きな自信につながった。


「お前本当に行っちゃうのか。」


スカーフを外した直後だった。

ジョーは私の部屋に入った。


「うん、こんな顔だし、何かしたくて」


私はジョーから顔を背けた。


「でも何もわかんないし。お前は何がしたいだよ」


言えないから、もう帰って、と私が言うとジョーは素直に従った。

一言残して。


「お前が退院してから、一度もトランプしてねえぜ」


こんな時にトランプなんて。


三人の兄弟と遊んだ日々を思い出しながら、私は思っていた。

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やがて、旅たちの日が訪れた。


あまり長くここにいると国軍に見つかるのも時間の問題。

ちなみに最近は、火傷した少女レニーは死んだ、という噂が流れた。

つまり院長はうまく取り繕ってくれたのだ。

しかし、それは国がもう近くに迫っていると言うこと。

予定よりも二日早く立ち去ることにした。


「手がかりがあまりなくて、ほんとにごめんよ。」


エラルナが申し訳なさそうに言う。


「ううん、私を置いてくれたりしてくれたぐらいです。感謝してもしきれません。本当にありがとうございました。」


旅たちの前夜、私はエラルナと別れの挨拶をしていた。


私を助けてくれたこの偉大な女性に本当にありがたく思っていた。


私たちがしばらく話していると、ジョーがやってきた。


「レニー、ちょっと」


私が急いでエラルナの方を向くと、エラルナは微笑んでうなずいていた。



地下に移動した。


「なあに?ジョー」


私はこのつり目のジョーにかなり心を開いていたが、やはり意地悪だから、少し警戒していた。


「レニー、この半年、俺、すごく楽しかった。酷いことばかりしてて、ごめん。本当はレニーが…好きで」


うん?

相手は14歳の子供。

こっちは中身18歳。

この好きは友情的なものか、果たしてあっち系か…


でも、今の私は9歳の少女。

きっとお友達感覚だろう。


「うん!大丈夫だよ。私も女が好き!」


暗闇でよく見えなかったがジョーはかすかにビクッとした気がする。


5秒くらいの沈黙の後、


「あ。うん。後これ、あげる」


ジョーは私の手を取り、何かを渡した。

人形みたいだった。


「俺が作った。持っていって。」


いつものジョーはお調子者で、うるさくって、騒がしいのに、今日のジョーからはピンと張り詰めた空気の中にかすかな揺らぎを感じた。


「うん、大事にするね。ありがとう。」


また来る沈黙。

ジョーはなかなか手を離さない。


「ジョー、そろそろ行かなきゃ。荷造りも終わっていないし」


私はジョーに微笑んでからその場を離れた。


ジョーは翌朝の旅立ちまで一言も口を聞かなかった。


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転生したけどそれは悪役令嬢にコテンパンにやられる世界でした。 五条理々 @riri_gojo

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