人魚の母とむすめ 🐬

上月くるを

人魚の母とむすめ 🐬





 はじめはやさしい人の心を持っていたのに、たびたびの香具師やしの頼みに、いえ、はっきり申しましょう、大金の誘惑に負け、強欲な鬼になったろうそく売りの老夫婦。


 虎や獅子や豹が入れられていた鉄の檻に閉じこめられた人魚のむすめが、見世物にされるために南の国に連れ去られるとき、母親の人魚は悲しみで夜叉になりました。


 そして、北の海を思うさま吹き荒れたので、沖にいた香具師の船は難破して海底に沈みましたが、鉄檻には頑丈な錠がかけられていてどうしてやることもできません。




      🪸




 おかあさん!!(ノД`)・゜・。

 いとし子よ!!(´;ω;`)ウゥゥ



 母子の人魚が赤錆の浮き出た鉄格子の内と外で、よく似た白い手を握り合っているとき、ざわざわと大きな水音がしたかと思うと、イルカの一団が近づいて来ました。



 ――美しい人魚さんたち、どうしたのかね?(/・ω・)/



 ひときわ身体が大きくて、人(イルカ(笑))望もありそうなボスのイルカが声をかけてくれたので、かあさんの人魚は、涙ながらにここまでの出来事を話しました。




      🏞️




 長いこと北の海で孤独だった身重の人魚(ここツッコマナイでください(笑))は生まれて来た子どもには同じ思いをさせたくないと、海岸の村のお宮に預けました。


 折しもふもとの村でろうそくを売って暮らしを立てていた老夫婦がお詣りに来て、石段で泣いている赤ん坊を見つけ、自分たちの子どもにしようと抱いて帰りました。


 やがて美しいむすめに育った人魚の子は、ろうそくづくりの手伝いを始めました。

 白いろうそくに赤い絵の具で魚や貝や海藻を、まるで見て来たように描くのです。


 むすめの描くろうそくに人気が出たので、貧しかった老夫婦は裕福になりました。

 ところが、その評判を聞きつけた旅の香具師がよからぬことを思いついたのです。



 

 ――きれいな人魚を南の国で見世物にすれば、大儲けができるだろう。🤢😈




 最初は断っていた老夫婦が、やっぱりお金に目がくらんで悪鬼の心に変身すると、むすめは絵が描けなくなり、連れ去られる前の数本は、ただ赤く塗っただけで……。


 そのことを知った母親は貝殻のお金を持って夜ふけに老夫婦を訪ね、愛しいわが子が残した赤いろうそくを求めると、山頂のお宮に灯してむすめの安全を祈りました。




      🎢




 いたましそうな表情で一部始終を聴いていたボスのイルカは、厚みのあるひれで胸板をドンとたたいて「よおし、おっかさん、まかしときなはれ~!!」と言いました。


 一団のメンバーは、各地の水族館でいろいろな芸を仕込まれて人間の子どもたちを楽しませて来たツワモノ揃いですから、みんなで取り囲むと簡単に錠が開きました。



 


 ――イルカのみなさん、本当にありがとうございます。

   わたしたち母子、このご恩を一生忘れません。🙇




 何度もお礼を言った人魚の母子は、華奢な肩を並べて北の海へ帰って行きました。

 赤いろうそく伝説でさびれた村の湾で、母子は永遠に仲睦まじく暮らしています。





      🐚🦑🐟🐡





 海底の鉄檻に閉じこめられたままのむすめを想って、永久とわに恨みつづけるしかないかあさん人魚に代わって、拙いペンで、せめてものリベンジを果たしたつもりです。



                   ※出典:小川未明『赤いろうそくと人魚』




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