宇宙の果て

@samezame39

【宇宙の果て】




「例えば」




「宇宙が無限に広がっているとする」


「…?そんなことはありえません」

「なぜそんな話を?」

「ちょっとした疑問だよ」


「まあいいから答えろ」

「なぜ宇宙に果てがある?」

「…なぜと言われましても、果てがあるからとしか」

「あー、言い方を変えようか」



「なぜ、果てがあると言いきれる?」

「え?」


「えっと、科学的にも証明されていて」

「お前が計算してお前が証明したのか?」

「いえ…」

「じゃあ言いきれないな」


「この間のニュースでも、カメラ映像が放映されていましたし…」

「テレビやカメラを通さずに、お前自身が見たのか?」

「………いいえ」

「じゃあ言いきれないな」


「…」

「もう根拠が尽きたのか?」



「ふむ、じゃあ質問を変えよう」


「なぜ地球は丸いと言える?」

「え?それは重力によって…」

「あーそういうのはいい、科学的根拠なんて自分で証明してないならアテにならん」

「そんなことはないと思いますが…」

「いいから、お前自身が確たる証拠として挙げられるもんはないのか?」



「確たる証拠…」

「あ」


「地球が丸いところを見ました」

「写真越しでか?テレビ越しでか?」

「いえ、肉眼で見ました」

「先月に宇宙ステーションで見ました」

「そうだな、じゃあ地球は丸いと言える」

「えっと、はい、そうですね」


「…だからなんなんですか?」

「まあちょっとした疑問ってだけだよ」

「我々は、肉眼で知り得たものと、外からの情報だけで知り得たもの」

「その2つとも、同列に信頼してしまっている」

「えっと、だからなんなんですか…?」



「なぜ?」

「…はい?」

「なぜ同列に信頼できる?」

「いや、なぜと言われましても…」

「うーん…日常生活に、支障をきたさないから?」


「と、言うと?」

「極論ですけど、宇宙に果てがあろうが無かろうが、死ぬわけじゃないですし…」

「どうでもいいっていいますか…」


「そうだな、その通りだ」

「…えっと、だからなんですか?」



「例えば」


「円周率に終わりがあったら」

「終わりがあるとしたら」

「それが根拠に基づいて証明されていたら」

「みんながそう信じていたら」

「お前はそれに疑問を持つか?」


「突然話が変わるじゃないですか…」

「いいから答えろ」

「えっと、多分持たないと思います」


「それを、お前自身は証明していなくても?」

「…はい」

「そうだな、今回の話と同じようなことだ」

「だからなんですか?」



「それって、なんかちょっと不気味だよな」

「はい?」

「なんだ?」

「いや、それだけですか?」


「それだけだが?」

「え?」

「それだけだ」

「…それだけ?」

「そう、これでこの話は終わりだ」



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