白馬に乗ってやってきた!

米太郎

もうすぐ来る……。

 それは白馬に乗ってやってきた。



 それが通った道は、暖かく。


 それが通った道は、明るく輝いていて。


 それが通った道は、とても幸せに溢れている。



 ◇



 まだまだ季節は冬。

 立春が過ぎたというのに肌寒い季節が続いている。


「今日も雪降るらしいよ」

「寒いのやだなー」


 教室の中では、そんな会話が聞こえてくる。


 私は席に座って、窓の外を眺める。



 教室の窓から見える景色は、どことなく暗い。

 昼間なのに、暗い雲が空を覆っている。


 頬杖をついて外を眺めていると、暗い空からさらさらと雪が舞い始めた。

 騒がしい教室とは違って、とても静かに。



 雪は白く輝いて見える。

 暗い雲ばかりの景色とは違って、雪はとても綺麗。

 けれど、冷たそう。


 急に肌寒くなってきたのは、雪が降ってきたせいだな……。

 脱いでいたブレザーを羽織るが、それでもまだ寒い。



 少し震えながら、ふと廊下の方を眺めると、彼が歩いているのが見えた。


 こちらの視線に気づいたのか、目が合ってしまった。

 とても気まずい


 先週、彼にフラれてしまったばかり。

 私の告白した気持ちに対して、すぐには答えられないって。


 そんな彼がこちらに近づいてくる。

 気まずくて窓の外に視線を戻した。


 白い雪が舞う中。

 遠くの空の方で、何か飛んでいるのが見えた。


 それが通ってきた空は、段々と晴れてきていた。

 目を疑った。

 こちらは、しんしんと雪が舞っているというのに。


 それが段々と近づいてくるのが見えた。

 それと同時に、あの人の足音も私の席に近づいてくるのが聞こえた。


 胸の高鳴りが止まらず、窓の外をばかり見る。

 飛んでいたそれは、気が付くと窓のところまで来ていた。

 教室は三階だというのに。

 宙に浮かんでいる。


 白馬に乗ったそれは、私に微笑みかける。

 すると、なぜか暖かな気持ちが溢れてきた。


 白馬もこちらにお辞儀をすると、軽快に走り去ってしまった。


 それが走り去ると、降っていた雪は弱まり、空から光が差し込んできた。


 席まで来た彼が話しかけてくる。


「前の返事なんだけど」


 私は恥ずかしくて、彼の方に体を向けるが目線はうつむいたままで聞く。


「友達から始めて欲しい。少しづつお互いを知れたら嬉しいなって」


 気付くと、雪は止んでいた。

 空は晴れていて、暖かさは窓からもやってきた。



 それが通った道は、空が晴れる。

 草木は太陽の光を浴びて、生き生きとして。

 枯れ木のように見えていた木にも、つぼみが見える。


 それは白馬に乗ってやってきた。

 私のところにも。

 春がやってきてくれた。

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白馬に乗ってやってきた! 米太郎 @tahoshi

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