第53話 最後に感謝したら

 「どうですジョイさん」

 「大丈夫だな他と何も変わらん」

 「よかった」

 「それでどうするの?」

 「やっぱりやめましょう」


 あれから一か月すべてが片付いたのでジョイさんにコミネ村を見て貰った、一瞬とはいえ太陽の近くの光をウィンドウ透過させたのでいろいろ心配だったのだ。


 あの日リリカが泣きながら帰ってきたのでサラちゃんをウィンドウで探した。

 十キロ近く離れたその山の麓で見つけたときサラちゃんは何かに押さえつけられていて今にも食われそうだった。


 そいつは人間のシルエットこそしていたが何かが違う、骨の向き?筋肉の質?いや一番はその口だ。

 顎がずれるように動いて大きく広がる。


 サラちゃんはじっとしていれば助かると信じているみたいだ。

 悲しい目をしながら微笑んで耐えている。


 私はいつも手元にある火掻き棒を突き入れた。

 顔面に当たったが子供の力、肉をそぐにとどまった。


 そいつはのけ反って雑音の様な叫び声をあげた、よし!サラちゃんが逃げ出した。

 何度か突き入れる、二回刺さったが火掻き棒は武器じゃない傷は知れている。

 サラちゃんが見えなくなった、時間は稼いだと思ったときにそいつが笑った、笑ったように見えた


 まさかと思った、ラノベは何でもありだったと思い出した、そして窓から何かが押し寄せてきた。


 ウインドウの笑い声が大きくなるのと体が燃えるように熱くなるのが同時だった。

 マーカー便りの未確認打ち、直ぐに止めた、したこと自体意識したわけじゃない、そしてウィンドウを見て暴風が吹き荒れている一面を見る。


 一瞬で恐怖してすぐにサラちゃんを守るためにウインドウを移動させた。

 あの時ウインドウを捻じ曲げて守ろうとしたときに二分割が出来た。

 真空を間に挟むので熱が来ることは無いがすべての光が熱に変わる素養がある。

 大瀑布と熱を遮断し上昇気流から生まれた竜巻を大空に飛ばした。

 泣きながらかけていった彼女を見たときに自分のしたことに気付いて意識が朦朧とした。


 コールの町から山を砕いて真っすぐに道を作ろうと考えたときに思い出したので見て貰った。

 大丈夫そうだけど何があるか分からない、ジーニアスには土使いが沢山いる、山を測量していいルートを探した方がよさそうだ。


  直線で約百キロある山脈群、過去に何度か強行したが百年たってもほとんど進んでいなかった。


 鉱山の発見で出来た登山道ですら馬単体でしか通れない。


 ウインドウは高さも自在なのでコップに水を入れて、透かして見るだけで水平が分かる、目印にマーカーを置いていけば馬車が通るルートは直ぐに見つかる。


 今私のウインドウは十五メートル四方に出来る、ウィンドウを動かして土魔法を使えばテストを見る限りだが、一か月で終わる予定。


 実際の道の長さは三百キロを切るくらい、休憩所も必要か、ああ土魔法も無限じゃないか。自分の失敗を忘れるとは。


 伝声塔があるなあれを巻き込むか。


 ウジさんの事は結果一番いい方に転がった。


 隠れたウジルノウ伯爵を例の地下室で拘束、見つかったのを酷く驚いていたな。

 父さん一行がジーニアス兵と会うときにウサミ・ジハ・アジカナム元伯爵を馬車ごと送りドウル・デニ・.ジーニアス上領主に父さんと同道して謁見、領地地区内乱説をごり押しした。


 一番良かったのはコルトバ伯爵が保身に走り譲渡穀物を影で運んでいたこと、次が私が捕まっていなかったことで慎重になったのか、被害を出してよいという指示を出していなかったこと、最後がサラミドル邸襲撃の指示は出していないことが分かり、スマケラ湖の永久監視員として中洲での生活を強制されるにとどまった、家族も一緒に行くそうだ。


 ゾルダン家で可笑しな空気に慣れていたバラバルの独断先行だったそうだ。


 一番の罪がゾルダン虐めとは予想外だった。


 ツキヨミ様の尽力も大きかったと思われる、私がいると信じて被害が出ない事を最低条件に占い続けたらしい。


 流石に代償なしには収まらず私がジーニアス領で暮らすことになったが。


 「坊ちゃん用意が出来たよ」


 デバスさんが報告してくれる。

 男性陣も全員が残った、先週奥さん達の移送も終わらせた、セミス商会は今は待機中、家の離れを店に改造している。

 女性陣もさっき送り終わっているので後はデバス、ガラリア、ジョイさんだけだ。


 母さんは自力で帰っていった。装備は新しくしている。

 筒の左右に同じ方向のタービンを同軸上にくっつけて置く、真ん中に圧縮空気の取り入れ口を作り空気を送っても反発しあって回らない、片方だけ効率を上げれば準じた方向にタービンが回る、この時反対側の引きずられるタービンが余計に空気を掻き込んで圧縮空気にプラスされて排気される、この無限ループがジェットエンジンだった。


 出来たから言えること、一人乗りの例の奴を作ったら四度墜落して調整してを繰り返しやっと乗りこなした。最初の装備が無かったらやばいことも有った。


 今ではなんちゃって三角測量だが四百キロ近くは出せている。


 この地区用の風車も作った、風で動く車、風車式とホロ式、荷物は拡大鉄てんこ盛りのホロ車プラス風魔法が一番効率が良かった。


 草原で男性陣を送り終わってしばらく空を見る、紺色が濃くなっている。そう言えば団長があれが来なかったと言っていた。

 出来るだけたくさん、カッコよく、能力を見せよう。


 ジョイさんの彼女も出来たらしい、あまり見かけないので名前を忘れた。

 気付かれたのかもしれない。

 スキルのある世界、迂闊なことは控えよう。


 最近コルトバ地方のコロシアムで女神の応援というグループが人気になっている、何でも銀色のメガホンで応援されると必ず勝つそうだ。


 流れ星が見えた、祭りの後のおっさんと若い奴の口論を思い出した。


 アカシックレコード、とかアカシアレコードとか言っていた、宇宙の真理が刻まれてすべての疑問と未来が分かると言うと、宇宙の遺伝子のことで、人間の細胞がなぜ各機能を知ってるかそれは隣の細胞の挙動で決まるだけ、つまり我々も隣にある存在で行動が決まる、それを記録したものがレコードだと反論、一緒だと今でも思う。


 息つく暇もない一か月だった、まあ後は此処で時々雨を降らせて、道を作って、いろんな金属品を作って暮らしいくさ。十年の約束だし。


 ローデルさんを覗くと荷車にパラソルを立てて屏風を半円に囲んで食事をしていた。

 「かわいいお嬢さんですね」

 焚火に映る影に三歳くらいの幼女と似た面影の女性が増えている。

 「おう、びっくりした、珍しいな急に」

 「虫の知らせですかね」

 「何のだよ、いや、そうか最近寒いからな」

 「一緒に居るんです?」

 「旦那に逃げられたらしくてな、見つけたらえげつないこと言われたらしい」

 「きれいなんですか?」


 綺麗という言葉に反応したな、娘さんと二人、お母さんは童顔で可愛い系だからか?。

 「今は少しなでも根っこはまだきれいだぞ」

 こんな山奥に居るんだから察しろという顔だな。


 「それじゃあ車の改造しますね」

 「ほんとか、ありがたい」


 横幅を広げるのが一番早いが山の中を引きずるのに向いていない、いっそ狭めて弁当箱のように作れば必要な時に横幅を変えられる、120で作れば最大で200センチになる丈夫なガイドを作れば簡単に展開できるだろう。

 200⋇300、と二段ベット、コの字に置けば六人ゆっくり出来る、寝るなら十分だ。

 一応ばらして自由にレイアウトできるようにしとく。

 「よしっ、上のカヤック取ると雨漏れするから気を付けてね」

 「すまん、ありがとうな」

 「いえいえ、今回本当に助かりましたから、時間が出来たらまたお願いします」

 スーチさんを見ると胸もふっくら、美人さんだ。

 「お布団も一組入れときますね」

 「ねえ、あれ、」

 「しっ、黙って見てるの」

 バニラさん相変わらず私を見ると背筋を伸ばすなぁ。

 お酒とポテトを置いて離れた。

 あ、そうだトランプいる?。




 ウインドウの向こうからジーニアスのおっさんが用意が出来たと呼んでいる。


 あのおっさん帰ってこないと宰相さんが愚痴ってた。


 ここと家に温水器を作った屋根に乗せるやつ、薄い拡大鉄でも暖まったがそれなりにしかならない、タンク自体が放熱器になっていると気づいてガラスの小さな温室に入れると今でも五十度くらいになる、どちらもメイドを含めて大喜び。


  サラミドル邸の庭をパーティー会場にしている。

 

 「よーっし見る前にお話だー」

 私のウインドウの横にリリカとリサが並ぶ。飲み物や休憩用の椅子なんかの準備をしてくれる。火掻き棒で引き寄せる。

 「はーい」

 マルキル家の、サイカ、ミレイヤ、フクリちゃん姉妹はいつも一緒だ。

 少し離れてセミス商会の面々、一度遠目で見て感動したみたいだ。

 各々好きな飲み物や野菜や肉を入れた皿を持っている。パンテさんとリオナさんライカさんが給仕をしている、家の専属職人なのに。

 コウシアちゃんを抱いたマリンカさんも、ドーラン君を抱いたナツフカさんも、アリシアちゃんを抱いたユリシアさんもいる、親子だったの?、ロリエスちゃんとシンシアちゃんをママさんが世話をしてる、うん、嫁。マリナさんも、セリアーヌさんも、クリームさんもテミスさんもコハクさんもミレイさんも皆が笑顔で返事してくれるウインドウの中。

 父さんが居るしセイラン母さんがいるあれ?、あ、いまラスメリア母さんが勇み足で歩いてくる。


 「まあ、ま、あ、まあっ、まあっ!呼びに来ないでまあっ!!」

 一緒に妹のチルミアリがついてくる。


 バーベキュウ大会、皆各々で好きに食べて飲んでいる、デバスさんはもう出来上がって奥さんにパンチを貰ってる、ガラさんは大人しめの奥さんが多い、ジーニアスさんは奥さん五人と娘さん三人が父さんと母さんの世話をしている外堀作戦か、まだ諦めてないな。

 ネルとユウが肉を貰って嬉しそうだ。

 ナクが近寄ってクンクンしている触れないからな。


 伝声塔では変形ポーカーが人気、一枚ずつ順番にカードを交換、誰でもいつでも止めれるが宣言者は勝っても一割減らされる、その時に開示した役で勝負するという、感情の読み合いが少ない平和な感じ。


 スチリス邸のテラスには最近小さな鐘が置いてある、家の鐘とウィンドウで繋がっている、叩けば誰かが気が付く。

 私のウインドウが五つになったから一つ固定した。


 サインラル邸ではパンタさんとナサリアさんが相変わらずの掛け合いをしている。

 屋敷の土地を広げて厳重な保管庫と兵舎を作るみたいだ。


 服屋のおやじからは時々買っている、私が提案した浴衣やジーパンもどきが屋敷でも人気がある。


 かしまし娘たちはあちこちにそれぞれの男がいる、深くは知らない。


 喉にマナをいき渡らせる、六回目で慣れた、本当に七人の声を出せる。

 一通り前置きを話し終えて時間もジャスト。

 「最後にみんなでぇ」

 「ひつまさんありがとー」


 「星の戦争始まり始まりー、通訳はわたくしオムル・アス・サラミドル!!」

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魔法もスキルもハーレムもあるのに全然ファンタジーじゃない!! 上田 右 @kanndayuu

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