凶馬は運命を妨げるか
十余一
凶馬は運命を妨げるか
それは白馬に乗ってやってきた。白馬といっても童話に登場するような麗しい馬ではない。かの
水色の勝負服に白い帽子を被った騎手は、その馬に揺られながら馬場に入場した。馬の胴には一番のゼッケンが掲げられている。
空はどんよりと曇り、今にも雨を降らせそうな雲が低く垂れこめていた。ある種の狂気すら
いつか、敬愛する作家が愛好していた煙草を吸い、物語の舞台となった競馬場に行きたい。しかし余命宣告でもされない限りは出来ないだろうなと、昔、冗談めかして言った言葉を実行に移しているのだ。
俺にとって煙草と
俺の実父は、家族危急の時に煙草を吹かしながら玉入れをするような男だった。生ごみの腐ったような男だ。反面教師になる以外に価値のない
それでもやっぱり、死ぬのなら、憧れの文筆家に迫る死に方が良いと思ってしまった。最期に、あの人が
そうして先程、喫煙所で吸えもしない煙草に
白地に赤丸のパッケージはそのまま鞄に仕舞われた。残りは棺桶にでも入れてもらおう。
馬券は単勝の一。亡き
主人公の名前も、史学科を出て教師になったという経歴も、野暮天で糞真面目という性格も、自分と重なるものだった。作者自身が自分と同じく金木犀の頃の生まれであるということも、親近感を抱かせた。
こうして静かな
しかし、もしも大金を手にしてしまったら、命を終わらせたくないという
凶馬は運命を妨げるか 十余一 @0hm1t0y01
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。