第9話

 「結局、式が終わっても来なかったな。奈純。」

 陽はあんなに緊張していたというのに、奈純が来なかったことに誰よりも落ち込んでいる。


 「まあ、しょうがないだろ。連絡も取れないくらい忙しい仕事なのかもしれないし……。」

 光紀はみんなを慰めながらも、落胆を隠せていない。


 「幸せなら、いいの。陽の結婚式、見たくなかっただけかもしれないでしょ?」

と、無理に冗談めかして笑う明音。


 幸せな日のはずなのに、みんなの顔は暗い。


 「連絡が取れたことだけでも喜ぶべきなんじゃない? きっと元気でやってるよ!」

 そう、生きていることが確認できただけでも充分なんだ。これ以上は望むまい。


 「そうだな。奈純なら、なんだかんだで元気にやってそうだよな。そう、だよな。学生時代のは、もう、いい思い出、になったんだろうな。」




——願うことさえ、許されない。

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眩しすぎる太陽 千蘭 @sennrann

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