色々 どこかに使う文章たち。
◯
何故、我々が魔女と呼ばれるのか。
そもそも、魔女とは何であるのか。
我は己を知る為に、各地を訪れ様々な文献を集めた。
ランジャックでは、穢の成り立ちを聞いた。
ヴァルトでは、穢に対する人間たちの感情を知った。
セリシアンでは、最厄にして原初の魔女を調べた。
そうして穢や魔女を知る度に、我は人間とは程遠い存在なのだと思い知った。
今の人間は、この魔法と呼ばれる精霊の力を使えぬ。それが当たり前なのだ。それが現在の人間たらんとする条件なのである。では、我は何だ?精霊の力を使役する我は、人間でない我は、一体何だ?精霊に近しい存在か?いいや、違う。ならば穢か?いいや、我の力はその枠に収まってはおらぬ。我は…我は……異端、バケモノである。我の持つ雷の力も、歳をとらぬ肉体も、何もかもが異端であるのだ。
この結論は、どうしてか我の心にストンと落ちた。きっと各地を放浪し様々な生き物に出会うなかで、心のどこかで己の異端さを感じていたのじゃろう。
我は再び放浪した。今度は、このリステトラという世界を知る為に。
数十の年が過ぎ、穢狩りや魔女狩りの風潮が高まってきた頃。
我はイルニアの存在を知った。
魔女とは穢の中でも特に異端と見なされた者たちである。
だが、アレは違った。アレは、生まれながらの魔女であった。
例え精霊の力を持っておらずとも、その特異な血がアレを魔女たらしめた。
アレは、空間の魔法を使う一族の末裔であった。
◯記憶の断片
女性は愛おしそうに、自分の膝の上に頭をのせて眠る少年の頭を撫でている。
穏やかな笑みを浮かべるその姿は、正に「母」のようで……。
それが、自分の知る彼女とあまりにもかけ離れていて……。
僕は戸惑いを隠せなかった。
僕であって、僕ではない少年。
かつて存在し、どこにもない記憶。
知らない。そう、知らないはずなのに……。
どうして、涙が溢れるんだろう。
どうして、懐かしさが、寂しさが、悲しみが、愛しさが、こんなにも胸を締め付けるんだろう。
教えてくれ。誰か、教えてくれ。
僕は、大事なものを忘れている気がする……。
Ristetora7 -青年と魔女- 花園 露 @hanazono_tsuyu
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