『で。どうしたんだお前』


「いや、まぁ」


『おい重要なところだぞ。下手したらみんなしぬんだ』


「軋華が、いや、彼女が気張ってくれました」


『はぁ?』


「彼女の心と身体の隙間にそれがあったんですけど、彼女、急に何とかするとか言い出して。心と身体の隙間で、なんというか、すりつぶす。そう。すりつぶしたんです。それを」


『いや、分からんが。とにかく、除去対象はどうなった』


「すりつぶされました。もういません。街は安全です」


『そうか。まぁ、それならいいか。よくやった。お手柄だ』


「あの」


『見えてるよ。彼女、べったりじゃないか』


「つかれて眠いそうなので、どこかに休ませてあげたいんですが」


『そこらへんのホテルでいいだろ。こちらで人員を』


「あっ」


 監視カメラに向かって、首をふる彼女。


『お前のご指名らしいな。送ったれよ』


「ねぇちょっと困りますよ。あなたも女でしょう。通信室から出てきて」


 あっ。このっ。


「通信切りやがった」


「ねむい」


「ああ、はいはい。眠いですね」


 首の下辺りを、撫でる。猫かよ。


「わたしのこと、好き?」


「ちょっと手がかかりそうなので、微妙かもしれないです」


 あっしまった回避が。


「いたいっ」


 左脚。すねが。


「あたったね?」


「当たりました」


「わたしのこと、好き?」


「ノーモーションで回し蹴りしてくる相手はきらいです」


「ごめんなさい」


「今からホテルに向かいます。たぶん大丈夫だと思うんですけど、一応監視も含めて」


「あなたが送って。あなたが監視して」


「なんでですか」


「だって」


 絶妙に気まずい、沈黙。


「わたしが脚払いした女のひとに監視されるの、ちょっとこわい。反撃されそう」


「あっなんだそういうことですか」


「大丈夫ですよ、私たちのことは気にしないで」


 あっ。哨戒班。一周して戻ってきたのか。


「うわっごめんなさいごめんなさいごめんなさい」


 3人いるから3回謝ったっぽい。変なところで律儀。


「脚払いされたぐらい誰も気にしないですって」


「じゃあ、とりあえずみんなで送りますか」


「やぁぁ」


「ほら立って。手離しますよ?」

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軋華 春嵐 @aiot3110

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