〇〇〇〇始めた二見さん


 二見さんがイソスタなるものを始めた。きっかけは友達の前田さん、後呂さんが投稿してたのを見たのがきっかけだったようで。自分もやってみたいと思ったのかもしれない。

 もちろん私もその日のうちに始め、二見さんの投稿を追うようになった。


 だって、もし、自分の投稿したものにいいねがつかなかったら。

 二見さんは恥ずかしい思いをしてしまうだろう。ネットの世界には自分の居場所はないんだと思い込んで、ふさぎ込んでしまうに決まってる。

 もしくはより、過激な投稿をしだすかもしれない。ハレンチで釣り、あとでとんでもない目に遭うに決まってる。


 そうなってほしくないので、二見さんの投稿したものは誰よりも早くチェックし、いいねをつけてます。

 とはいえ、すでに人気が出始めてるので、私のサポートは必要なかったかもしれないけど。

 にしても、可愛いな。


 「むふふ」


 おっといけない、ついニヤケてしまった。慌てて口角を軌道修正。

 なに気持ちの悪い顔をしてるのかって? 二見さんのイソスタをチェックしてるとそうなってしまうのだ。

 投稿されてるものは私服を着ての自撮りとか、美味しいものの自撮りとかありふれたものばかりだけど、やっぱり二見さんの魅力がそうさせるというか。

 完璧超人には、ネットのみんなも目を留めちゃうのだろう。


 「すごいな環っ! 始めて一週間も経ってないのに、もうフォロワー二万超えてるじゃん」

 「え、うそ? ほんとだヤバー!」


 二見さんの友達たちが、やいのやいの言っている。件の張本人はほんのりと頬を赤らめて恥じらっていた。

 そんな顔を見てニヨニヨしてしまいそうになる。なんだか自分のことのように嬉しいのだ。


 「でもさ、ここまでフォロワー多いとヤバいやつとかついてそう」

 「そういうの怖いよね。ほら、顔出ししちゃってるからさ、いつ危険な目に遭ってもおかしくないっていうか」


 その点は任せてください。私がこの命に変えても、お守りしますから。

 内心で闘志を燃やしてるとこに、会話が深掘りされていく。


 「えぇ、この人いつもいいねくれるって? しかも一番最初に? それストーカーじゃないの」

 「もしかしたらヤリ目的なんじゃない。名前もシャドーとか絶対男だよコイツ」

 

 うっ、それは私なんです……。気の利いた名前にできなくてごめんなさい。

 ぐさぐさ心にナイフをぶっ刺され、ちょっと落ち込みかける。二見さんは必死に訂正してくれてるけど。

 はぁ、辛い……こうなったら二見さんの投稿を見て、心を潤わせよう。


 スマホをスクロールし、投稿されてる写真を眺めていく。

 眺めてて思ったんだけど、写真に写ってる二見さんのベッド。ふかふかして気持ちよさそう……じゃなくて、横に傘とか箸とかハンカチとかが置いてあるのだ。

 いやまぁ、それ私が貸したやつなんだけど。どうしよう、回収し忘れてた。

 といっても声をかけて渡したやつじゃないから、私のだって分かるわけないし。


 大事にしてくれてるんだって分かっただけでこちらは満足です。

 私はそう思うことにした。

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