〇〇そうな二見さん
窓の外はどんよりしていて、雨でも降ってきそうな天気。梅雨の時期ともなるとだいたいこんな感じだ。
で、天気予報どおり、放課後辺りには雨が降ってきた。
まぁ私には傘があるので問題ないけど、二見さんにとっては問題だった。
彼女の後をこっそりついていくと、昇降口で黄昏ていらっしゃる。いつもの抜け感を発揮したせいか、傘を持ってくるのを忘れてたのだ。
とはいえ、いうほど降ってるわけでもない。小雨ぐらいのもの。
だけど人気者である二見さんが濡れるのは一大事だ。
なんでって、濡れたら間違いなく透けるから……!
ブラウスが身体にぴっちり貼りついて、いつも以上にラインが出ちゃうし、ブラジャーの色が周りに知られちゃう。
そんな絶景を周りを歩く人たちが見ないはずもなく、
『雑誌の撮影でもしてんのか? いや違う、あれは露出狂だ!』
『おいおい、濡れすぎだろ。そうまでして俺らの目を惹きたいのかぁ?』
『とんでもねーエロ女だな。いったいどこまで濡れてんだか』
『よーく確認してやらなきゃな、えぇおい?』
『恵みの雨だ! 神に感謝します!』
――と、四方八方から襲ってくる野次馬に辱められるに違いない! あることないこと教え込まれて、そのままやらしいビデオにデビューさせられるに決まってる!
そんなことさせるか! 二見さんの貞操は私が守り切らなければ。
こういうとき二見さんの友達たちがいれば、相合傘という感じで傘に入れてもらえるんだろうけど。
あいにく今日は二人とも委員会の仕事でいない。
じゃあ私が代わりに……って、出来るかー! コミュ障ぼっちには荷が重すぎる。
「…………」
ひとりで百面相してる間に、二見さんがリュックを下ろし、中身を探り始めた。もしかしたら入ってるかもしれないっていう一縷の望みにかけるんだろう。
よし、こうなったら私の持ってる折り畳み傘を、リュックの口に向け投擲してやる。さすがにバレそうなので、なにか彼女の気が引けるような展開とか……、
「っ!」
空を見上げれば、ゴロゴロ鳴っている。雷だ。
あれが落ちてくれたら二見さんも目をつぶってくれたりするんだろうけど……。
などと神頼みしてると、ほんとに落ちてきた。
怖かったのか、二見さんが耳を塞いで目をつぶっている。いまだ!
私は傘を放り投げ、見事二見さんのリュックに吸い込まれていく。
目を開けた二見さんが、小首を傾げた。そりゃさっきまでなかったのが急に現れたんだろうし、不思議がるのも無理はない。
でも、二見さんは抜けてるので特に気にしなかったようだ。傘を広げて普通に帰っていく。
よかった、バレなかった。
私はホッと息をつき、土砂降りになりだした雨の中を走って帰る羽目になった。
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