ゲーム実況者たちは異世界にいっても大丈夫?ではないかもしれない
usi(ウシ)
すべてのはじまり
「優勝は・・NEKO---」
今日はあの人気格闘ゲーム「TEKKON」の日本選手権大会。
おれはついに日本の頂点になった。思わず涙が零れ落ちる。ここまで辛く厳しい日々だった。
仕事終わりに毎日夜遅くまでひたすら「TEKKON」。土日は当然「TEKKON」。仕事中も「TEKKON」。それはさすがにしていないが。とにかくこの日のために文字通り人生をかけてきたのだ。
それがようやく実を結んだのだ。これほどうれしいことは生まれて初めてだ。
スタッフからトロフィーを受け取る。重さは軽いが、とてつもなく重い。しっかりと握りしめる。すると司会の人がマイクをもって駆け寄ってきた。
「どうですか?実際にトロフィーを手にして」
「いや、すごく軽いけど、重いです、」泣きながら答える。
「いやー本当におめでとうございます。すみませんが、これからのことについて聞いてもいいでしょうか?プロを目指したりするのですか?」マイクをこちらに近づけてくる。
「そうですね、とりあえず仕事をやめて。配信者になって生活していきたいですね」
「配信者ですか!それは楽しみですねー。期待される方も多いと思いますが。」
「そうですね期待していただけたら嬉しいです」
あのインタビューから2年後。おれは宣言通りに配信者として生活している。
この前ようやくチャンネル登録者数が100万人を突破した。ちょーうれしい。
あの日から全てが変わった。今はなんのストレスもなく気ままに配信をして生活している。そして今度、人気配信者5名を集めた大きなイベントがある。こんなに大きなイベントに出られるなんてうれしい。楽しみだなー。
「それでは「ゲーム配信者祭り」スタートでーす!!」
「わーーーーー、うおおおーーおお」
会場の盛り上がりがすごい。床が震えている。
「それでは今日の主役たちを紹介します!まず一人目、あの人気格闘ゲーム「TEKKON」の日本選手権大会優勝者。現在チャンネル登録者数100万人超えの NEKOーー!!!」
「みんなー!来てくれてありがとうーー!」
僕は大歓声と拍手の中ステージの中央に歩いた。めちゃくちゃ気持ちいい。
「続きまして、武器は刀のみ!侍ゲー、戦国ゲー、刀を持たせたら周りに敵なし!昔なつかしやまとなでしこ!武士道系女性配信者 一文字 かえでー!!」
「おまえらーー!!1盛り上がってるかーー!!!声ちいせいぞーー!!!今日もおまえらをぶった切ってやるぜーー!!!」
「わーー!! かえでさまー!!」
「続きまして、無気力?ちがう! 幽霊、ゾンビ、悪魔、なんでもござれ!私にかかれば一斉退治!!その萌え声で幽霊すらも魅了する!ホラーゲームの女王 ばけ子ーー!!」
「こんにちはーー。おまえらよろしくなーー」
「わーーー!かわいい!やるきだしてー!!」
「続きまして、FPS実況者といえばこの男!!数々の大会に出場したこの男が華麗な動きと正確すぎるエイムであなたのハートを狙い撃ち!! イケボFPS配信者 JUNーーー」
「うぇーーーい!今日は楽しんでってくれよなーー!!」
「きゃーー。JUNーー。抱いてーーー!」
「続きまして、魔法大好き!お金も大好き!、MMORPGのトップランカーの彼女は今日もあなたに魔法をかけるー! 魔法少女 さやかー!!」
「みんなーー!来てくれてありがとう!今日もたくさんお金ちょうだい!」
「わーーー!好きだーー!金返せー!クズーーー!」
「はい!今日はこの5名でイベントを行います!今日はみなさんよろしくお願いしまーす!
それでは NEKO さんよろしくお願いしまーす!」
「はーーい!皆さーん今日はよろしくお願いしま・・」
そう言いかけた瞬間、異変に気付く。地面が揺れている。次の瞬間立っていられないほどの揺れがきた。
「きゃあーーーーー!!助けてーーーー!うわーーーー!」
会場から様々な悲鳴が聞こえる。まさにパニック状態。
地面にしがみついていると。地面から赤い文様が浮かび上が上がってきた。なんだこれは。考える暇がない。揺れに耐えることで精一杯だ。
なんとかまわりを見ると、他の4人の地面にも同じ文様が浮かび上がっていた。俺たち5人だけ?
次の瞬間強い光に飲み込まれておれの意識はそこで途絶えた。
「・・・おい起きろ!おい!」
大きな声と体の揺れによって目を覚ます。目の前にはJUNがいた。
状況が読み込めない。まわりには白い空間が広がっており、JUN 以外の3人は横に並んで椅子に座っている。
おれも椅子に座らされているようだ。
「ここは?どうなっているんだ?」 JUNに聞いてみる。
「分からん。だがお前が起きたらあそこの男が教えてくれるそうだ」
JUNが指をさした先には椅子に座って手を机の上にのせている男がいた。まるで面接だ。
「ようやく起きたか。まずは自己紹介だ。私はここで異世界からきたものたちに職業、つまりジョブを与える仕事についている者だ。名前は教えない。お前たちの世界のハローワークみたいなものだ」
そういうと男はめんどくさそうに頭をかいた。
「異世界?ジョブ?説明が足りなすぎるぞ」 一文字が圧のある声でいった。
「はーー。お前たちは今から異世界に行くことになる。ラノベくらい読んだことあるだろ。
お前達は異世界の住人に呼び出された。ただそれだけだ。その世界ではだれしもジョブを持っている。だからお前達にジョブを与えるのがおれの仕事だ。」 男はため息まじりに説明する。
どうやら俺たちは異世界に行くらしい。ラノベくらい読んだことはある。心なしかテンションが上がる。他の4人もどこか嬉しそうだ。
「よかった。騒がれたりしたら面倒だと思っていたが。お前達の世界の人間は順応が早くて助かる。」
「それでお前達のジョブだが大きく分けて。生産職と戦闘職の2種類ある。まあその中から適当に選んでくれ」
そういうと男は紙を渡してきた。その中には様々な職が書かれていた。
「時間は10分やるそれまでに決めろ」男は机に戻っていった。
キタ!異世界定番のジョブ選択。ここは慎重に決めなければ。
そして10分後。
「まずNEKOが武闘家。一文字が侍。バゲ子が死霊術師。JUNが銃使い。さやかが魔導士。
なるほど、全員が戦闘職希望か。分かった、お前達には希望どうりの職についてもらう。」
そういうと男はそれぞれのジョブを書いた紙をどこかに送った。というか消した。
「これでお前達のジョブの設定が完了した。異世界生活楽しんでくれ」
男はそういうと指を鳴らした。
すると足元からあの時の赤い文様が出てきた。その後またつよい光に包まれて意識を失った。
「ふーー。やっと終わった。まったく中間管理職も辛い。それにしても全員が戦闘職を選ぶとは。
あの世界の住人は元の世界に帰せだの文句を言わないのがいいが。頭が幼稚すぎる。
異世界の状況がどうなっているのか。なぜ自分たちがよびだされたのか。そういうことを何も聞かずにジョブを選択するとは。なぜ自分たちが特別だと思いこんでいるのか」
男はコーヒーを飲みながら椅子に座る。
「まあ知ったことではないか。頑張ってくれ異世界の住人たちよ」
そうするとまた赤い文様が浮かび上がってきた。
「ふーー。今度はもう少しましなやつらが来てくれるといいが」
男は両手を挙げて背伸びをした。
ゲーム実況者たちは異世界にいっても大丈夫?ではないかもしれない usi(ウシ) @touryou2001
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