第6話 ついオタク出ちゃいました

 博物館に着いた私達は、入館料を払い中に入った。


 中は思っていたよりも広く、4階建てからなるこの建物は世界中から珍しい物を集めているようで、大勢の人が見に来ていた。

 ルトは珍しそうに辺りを見渡して、感嘆かんたんの声を上げた。


「すごぉーい!ここが博物館なのね!へぇ〜!」


 子供のようにはしゃぐ姿に、私は思わず笑みがこぼれた、その横でオスカーはため息をつき、ルトに言う。


「はしゃぐな小娘こむすめ、俺達の事がバレたらお前もサカキも、この街にはいられないんだぞ、もっとつつしんで行動をしろ」


「わ、分かってるわよ!いちいちうるさいやつね!」


 オスカーに叱られたルトはぷくーっと頬をふくらませて反論はんろんした。この2人は息がまだ合わないみたいだな、これから仲良くなってくれればいいが。


「うぉー!人がいっぱいだぞ!面白そうなもんもいっぱい!楽しいなー!にーちゃん!」


「カイ、もう少し静かにな、サカキに迷惑をかけるなよ」


「はーい!にーちゃん!」


「あたしとの扱いの差!!」


 カイには優しいオスカーにツッコミを入れるルト、その一連の流れを見ていた私は微笑ましくてたまらず笑ってしまった、やはり仲間というのは良いものだ。


「それではそろそろ、天使の花を見に行きましょうか」


 私の声掛こえかけで3人それぞれ返事をし天使の花が展示してある場所まで行った。


 いざ到着して実物を見てみると、透明とうめいなケースに包まれた天使の花は見る者を魅了し、釘付くぎづけにする、そんな感想をいだくほどに美しかった。


 私はもちろんだが、ルトや、そしてカイでさえも言葉を失うほどに綺麗なのだ、そのまま天使の花に見とれていると、オスカーが、私に声をかけた。


「サカキ、この花を鑑定すればスキルで場所が分かるんだよな?」


「は、はい……では早速鑑定してみましょうか」


 私は鑑定を天使の花に使い、詳細を見た。


【天使の花】

 天使がこの世界に降りてきて咲かせたとうわさされるほどに美しい花。毒は無く、主に薬として活用される。


「鑑定成功しました、これでいつでも探せるようになったと思います」


 私がそう言うと、3人とも喜びの表情を見せ、私も嬉しくなった、早く天使の花を見つけてあげたいところだな。


「それでは【サーチ】を使ってみますね、近くにあると良いのですが……」


 発動させると街の外の山に反応があった、ここは確か……ウィーゼルガラーとかいう山だったな、街で買った地図にっていたはずだ。


「場所が分かりました、街の近くにあるウィーゼルガラーという山にあるそうです」


 私がそう言うとオスカーが、片手で顔を押さえこう言った。


「チッ、よりによってあの山か……面倒めんどうなことになりそうだな」


「おー?にーちゃん山になにかあんのかー?」


 カイがそう聞くとオスカーが真剣しんけんな顔で皆の方を向きこう言った。


「あそこの山には昔から凶暴きょうぼうなドラゴンがいると言われていてな、それを聞いた冒険者たちがこぞってあの山にいどむも、帰ってきたものは一人もいないと言われている」


「ひ、一人も……!?あの山にそんなに恐ろしいやつがいるなんてあたし知らなかったわよ」


「知らないのも無理はない、この話は100年以上前の話だ。さらにそれ以降挑戦するものはいなくなり、あの山は危険だということで街の領主が条例じょうれいで進入禁止にしている」


 ドラゴンか!うーん皆には悪いが私は俄然がぜんやる気が出てきたぞ、ドラゴンと言えばまさにRPG王道おうどうのボスじゃないか!存在すること自体じたいに感動だ!


 目をかがやかせている私を見たルトが心配そうに私に言った。


「ね、ねぇサカキは何でそんなにうれしそうなの……?」


 聞かれた私はここぞとばかりにたからかにかたりだした。


「ルト、私は魔法というものが大好きなのですが、ドラゴンなどのファンタジーな生き物も大好きなのです!あの森であなたを助けた時はまだ全力が出せていなかったのですが、ドラゴン相手だとどうでしょう!会える上に魔法を全力で出しても傷すらつかないかもしれない!あぁ、これは忙しくなるぞ魔法についてもっと研究していかなければ……ブツブツ」


 興奮こうふんしたように話した後ぶつぶつひとり言をつぶやいている私を見たルトはオスカーと顔を見合わせて


「おい小娘、サカキはいつもこうなのか?この男と契約を交わしたこと、少し心配になってきたのだが」


「うーん、それについて同情するよ、あたしも不安になってきた……」


「あははは!おじちゃんおもしろーい!」


「はっ、私は何を……み、皆さん今のは忘れてください!魔法のことになるとどうしてもワクワクしてしまって……!」


 なぜかオスカーとルト、二人の距離きょりが少しちぢまったように感じた。私の奇行きこう(?)のおかげか分からないが、自分の悪いところが出てずかしかった、気を付けなければな。


「そ、それでは今日のところは宿に戻って、明日準備をしてウィーゼルガラーに行きましょう!」


「「お、お~」」


「おー!」


 不安な二人と元気いっぱいな一人がそれぞれ返事をし、私たちは明日の集合時間を決めたり、持っていくものを調達した後宿に戻ったのであった。


 宿に戻ると私は部屋で一人、魔法を作成していた。


「うーむ、ドラゴンと戦うとなるとどんな魔法が有効だろうか……」


 実は私の魔法創造スキルは創る場合いくつかの条件がある、例えば創るときに出来ることを細かく設定すればするほど、魔力消費量まりょくしょうひりょうが増えてしまうことや、範囲の大きな魔法にすればするほどムラができるなどだ。


 ただでさえこのスキルで創った魔法は魔力消費量が大きいのでいくら魔力量が多い私でも「おれのかんがえたさいきょうのまほう」みたいなのを創ってしまうと魔力が足りなかったり、すぐ無くなってしまうというわけだ。


 それらをまえたうえでドラゴン対策の魔法を考えていきたいのだが、まずドラゴンというのが私の思いえがいているものと同じであれば、「火を吐く」と思うのだ。


 なので火を防ぐ方法として考えられるのは二つ、「身体に火炎耐性を付与する」か「炎そのものを反射してしまう」かだ。


 炎を反射するのもロマンがあるしかっこいいが、やはり実用性を考えると身体に耐性を付与するのが、一番コスパ的にも良いのだと分かってはいるのでいくつか創っておくとしよう。


……一応反射する魔法も創っておくか。


 その後いくつか今後使えそうな魔法を創っておいた、皆にお披露目おひろめするのは明日だな、楽しみだ。どんな反応をしてもらえるのだろうか、今から考えただけでもワクワクしてしまう。


「さて、すっかり遅くなってしまったな、私もそろそろ眠るとするか」


 軽く伸びをしてベッドに入ると、私は明日のことに思いをせながら眠りについた。

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イケおじ好きの女神に呼ばれて転移したおじさん、スキル【魔法創造】で異世界を謳歌する きんぐおかん @king0kan

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