第6話:エスポワール傭兵団
「ねぇ、さっきのって何?あの煙みたいになった魔物」
「あぁ、スライムのことか。もしかして見たことないのか?」
さっきのは、スライムだったんだ。
一人で本を読めない私でも、お兄ちゃんが本を読み聞かせてくれたおかげで、名前くらいは知っていた。
「うん。スライムだけじゃなくて、魔物自体が本の中の架空の生き物だと思ってた。」
「は、見たことないだけじゃなくて、存在自体ないと思ってたのか!?」
「う、うん ......」
「お前、よくここまで一人で来れたな......」
男の子は驚いた顔で私を凝視していた。まぁ無理もないよね。
この人魔物に慣れてそうだし、話を聞いた感じだと町の外には魔物がいるらしいし。
それから少し歩いていたが、なんと男の子を見たスライムはみんな逃げてしまった。
さっきスライムを倒した時の様子も今とほとんど変わらなかったけど、この人って結構強いのかな?
「ほら、着いたぞ。」
そう言われて顔を上げると、そこには、教会のような建物があった。
何年か前に、大きな町のような場所に行ったことがある。そこにも似たような建物があり、お兄ちゃんが教会のことを教えてくれたのだ。
「うわぁ、すごい......教会みたい......」
「お、よく気づいたな。ここは昔教会だったんだが、町ができてからは誰も使わなくなってな。今は俺たちの拠点になっている。」
「拠点?」
「あぁ。簡単に言うと家みたいなもんだ。」
こんなに大きい建物が家だなんて、すごいな
ぁ。
男の子が家の扉を開けて、手招きをした。
私は男の子の後ろを歩いて家に入った。
玄関に入ると、あたたかい色の照明が部屋を照らしていて、なんだかホッとする。
外装もすごかったけど、内装もとても綺麗だな。
私がこの家に見とれていると、家の奥からドタバタと走る音が聞こえてきた。
「あっ、ヨハンだ!おかえり~!」
私と同い年くらいの黒髪の男の子が、壁からひょこっと顔をだして元気な声で言った。
「あれ、この子はだれ?」
黒髪の男の子が私のほうに近づいてきた。
「俺、ナギっていうんだ。よろしくね!へへっ」
「う、うん。よろしく~......」
ナギくんは満足そうな顔でニコリと笑って、また奥のほうへと走っていった。
ナギくんは元気よく自己紹介してくれたけれど、私は人見知りなせいで上手く返事ができなかったな。なんだか申し訳ない......
ヨハンくん?がため息をつきながら歩き始めたので、私は後に続いて部屋に向かった。
多分、ため息の原因はさっきの子だよね......
「おっ、ヨハンおかえり......って、どうしたんだ?この子」
紫色の長い髪をした女の子が、テーブルに皿を並べながら訊ねた。
「あぁ、近くで魔物に狙われてたから連れてきた。それと、こいつの兄ちゃんにここに来るよう言われたんだとよ。」
「へぇ、この子の兄貴はこの場所を知ってたのか。なんでだろうな。」
「さぁな。まぁ、それは後で聞くとするか。」
「さて、そろそろここのことを紹介しないとな。」
男の子はひとしきり話し終えると、被っていたフードを外した。
艶のある銀髪がさらさらと揺れる。
「ここはエスポワール傭兵団だ。」
孤独な私は傭兵になる シエロ* Lv.15 @siero-ciero
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