第15話
十年後。
「へー、そうなんだあ」
僕は、小さな女の子と話していた。
「……桜、誰とお話しているの?」
「おかあさん、みえないの? ここにいるよ?」
「ごめんね、お母さんには見えないなあ……」
「で、誰とお話してたんだ、桜?」
この女の子の父親が訊く。
「え~っとねえ、桜の妖精さん!」
「そうかあ、桜はロマンチストだなあ!」
父親が女の子を抱き上げて、屈託のない笑顔を向ける。
「も~、宙斗ったら、桜が目を回しちゃうでしょ」
「ああ、ごめんごめん」
「本当、親バカなんだから」
「バカはバカでも、親バカだけはいいバカだ」
「バカって言い過ぎ……」
「おとうさん、おなかすいたよ~」
「じゃあ、弁当にするか。千歳の手作り弁当は美味いからな」
「「「いただきまーす」」」
僕は、ここで幸せそうに笑う人間を見るのが、大好きだ。
あの桜の咲く四月に 夢水 四季 @shiki-yumemizu
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