主人公は男子高校生です。青春真っ只中のやるせない思いが文章ににじみ出ています。そして、相手役となる幼なじみのヒロインが抱える沼。こちらも驚きの展開をしつつ必然性を感じる沼です。この二人が一歩を踏み出せないままに時間を使い切ってしまうような関係が、なんとも言えず切ないです。どろどろしていることはまったくなく、むしろ清々しく綺麗すぎるがゆえに切ない沼にようこそ。
一見、おかしな彼女だと思ったのですが、その理由が最後の方で明かされます。それは悲しいこと、辛いこと。なぜ彼女がそうしたのか、何を思ってそうしたのか。考えると切ないです。そして彼女の隣でずっと見てきた彼はたまらなくなって行く様も見えます。彼にとって彼女は沼らせる人であった。彼は本当はそうで合って欲しいのに、それすらも言えない。それは彼女を思ってのこと。男女ともに辛い運命を抱えている、そんな小説でした。