三白眼の瞳
「うっわこれ、ボリュームすご!」
「めっちゃ映えそう!」
目の前で、佳弥と緑がメニューを見ながら楽しそうに騒いでいる。
自由散策でスイーツを食べようということで、僕達はとあるカフェの二階にある、別のカフェの席に座っていた。白い壁や天井に取り付けられた丸い照明、クルミ色やミルク色などのタイルが綺麗に並んだ本棚周りの壁。おしゃれすぎるこの場所に、僕は体を縮めそうになる。
隣で亜黒がいるから、何とか正気を保てている。
信弘は亜黒の隣に座り、窓から道路を見下ろしている。
「私たちは白いクマかき氷だね」
「男子メンバーは何頼む?」
前隣りのポニーテールの佳弥が訊く。
「俺もおんなじやつで」
信弘が言う。
「眞白君は?」
そう訊かれ、僕はあたふたしてしまう。
「え、ええと、僕もおんなじやつで……、あっくんは?」
あっくん……⁉ と、僕と亜黒以外の人たちが驚愕の声を上げる中、亜黒は平然と答える。
「昼食とっただけで満足だから、別にいいかな」
平然と亜黒は答える。
「そ、そう……、あ、店員さーん」
目の前のショートヘアの緑は注文をして、店員が去っていくと、両肘を机に乗せて、少し身を乗り出しつつも躊躇いがちに僕に訊いてきた。
「眞白君、亜黒君のことあっくん呼びなの? めっちゃ意外……」
「眞白君って亜黒君と結構仲良しだったり?」
佳弥が緑の隣から言う。女子の質問攻めに僕はどんどん焦っていく。
「ああ、俺、放課後のグラウンドから、教室に二人がいるとこ見たことあるぜ!」
信弘がさらに追い打ちをかけてくる。
「え、えっと……」
助けを求めるように僕は亜黒の方を向く。
「ねえ、亜黒君! だったら亜黒君は眞白君の事あだ名で呼んでるの?」
そう佳弥が訊くと、亜黒の背筋がピンと伸びた。三白眼の瞳が揺れていて、亜黒は動揺しているのだと分かった。
「いや、別に」
そう言って亜黒は俯く。その頬が、少し赤くなっている気がして、僕まで恥ずかしくなっていく。
「ねえ、二人で教室で何してるの?」
興味津々に緑が訊いてくる。少しだけ、体が震える。
「えっと、ぴ、ピアノ聞いてる……」
「ピアノ⁉」
女子二人が同時に声を上げる。亜黒が僕の方を見る。
「いや別に、大したやつじゃないんだけど……」
表だけの笑いを顔面に張り付けながら、僕は亜黒の方を見る。
助けて……。僕、この空気に耐えられないかも……。
そう思っていると、店員さんが思ったより早くかき氷を持ってきた。
「お待たせしました。白いクマかき氷です」
「あ、ありがとうございます」
緑がそう言い、かき氷を受け取る。
よかった、会話が止まった。と僕は一息つく。それにしても、女子の好奇心って怖い……。
その時の優しそうなお兄さんには、本当に天使のような光があふれ出ているように思えた。
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