年上の男性は嫌いですか?

 東の森の魔物の大量発生への対応は問題なく終了し、討伐に向かったメンバーは誰一人欠けることなく戻ってきましたが、被害が出なかったわけではなく、重軽傷者は多数でているようです。

 そして、もう一つの予言の王都に影というものですが、こちらが問題でした。


「まさかのシュリングル侯爵家による王家乗っ取り計画が動いているなんて、だれが想像したでしょう。いえ、乗っ取りと言いますか、娘のためにエディット殿下を取り込もうとしていたとは……」

「あの魔道具はエディット殿下がおっしゃったように対象者以外の異性が近づくとその相手と身に着けたものを排除しようとするものだったようだね」

「実に興味深いですわ」


 それも一度つければ身に着けたものが死亡するか結ばれるかしなければ外せないなんて、第二師団としてもぜひとも研究したいところです。

 しかしながら、なぜマルゴット様が家の秘宝とまで言われる魔道具を持ち出したかと言うと、いつまでたってもエディット殿下との仲が進展しないことに気が焦ってしまい行動を起こしたという事でした。

 わたくしから見ると仲睦まじそうになさっておいででしたが、マルゴット様からしてみたらまだ足りなかったという事なのですね。

 なんでも物語に出てくるお姫様のように甘い関係を求めていたそうですが、エディット殿下はマルゴット様を国王陛下に紹介するという事もなく、ただ時間ばかりが過ぎていて、このままでは学生のうちの遊びで終わってしまうとも思ったそうです。

 確かに学生と言う言葉だけで自由になってしまう気分があるのかもしれませんが、エディット殿下だって王族なのですからわきまえてはいますわよね?

 もっともわきまえ切れていないからわたくしとの婚約が白紙になったのですから、マルゴット様に安易に夢を見せてしまったという点ではエディット殿下に落ち度があると言えなくもありません。

 ともかく、王都の影というのがその魔道具の事を指しておりまして、一歩間違えれば王宮に勤めている女性や魔法学院に通っていたり教鞭をとっている女性陣が危険な目にあっていたかもしれないのです。

 エディット殿下は責任をとってマルゴット様と婚約することになりましたが、どうにも乗り気ではないそうで、魔法学院での仲睦まじさはどこへいったのか、熱心に語りかけるマルゴット様に対してエディット様は避けるような態度をとっていると友人から情報を仕入れた時は驚いてしまいました。

 シュリングル侯爵家は特にお咎めがあるわけでもないのが釈然としませんが、国王陛下がそうお決めになったのならそれに従うしかありません。

 国王陛下曰くエディット殿下の自業自得だそうですわ。


「オフィーリア嬢、エディット殿下の件はこれで正式に片付いたし、不吉な予言も片付いた」

「そうですわね」

「そこで、正式に君にプロポーズをさせて欲しいんだけど、どうかな。私と結婚を前提にお付き合いしてくれないか?」


 ジリアン殿下の言葉にわたくしはきょとんとしてしまいます。

 いえ、ジリアン殿下が以前からわたくしに好意を示してくれていることは身をもって実感しておりますが、改めて言われるとなんだかくすぐったいですわね。


「年上の男性は嫌いかな?」


 甘い声でそう言われてしまいわたくしは咄嗟に、


「ふふ、嫌いではございません。ですがわたくしは自立していますので当面そういったお誘いはお断りしたいですわね」


 と答えました。

 これに驚いたのはジリアン殿下ではなく国王陛下でいらっしゃいまして、今ではお忙しいというのに魔塔にいらっしゃってジリアン殿下のいいところをアピールしたり、ジリアン殿下のダメなところがあれば直させるので教えて欲しいと言われてしまいます。

 ジリアン殿下に悪いところがあるわけではありませんのよ?

 本当にわたくしは今の自由を楽しんでいたいんですの。

 何度もそう言っていますのに国王陛下は諦めませんし、ジリアン殿下の魔塔訪問も途切れてはおりません。

 おかげで適度な緊張とありがたい助言により魔法師団第二師団の作業効率は格段に上がったとだけ申し上げておきますわね。


 そして今日も……、


「オフィーリア嬢、愛しているよ」

「ありがとうございます。わたくしもジリアン殿下の事はお慕いしておりますが、お付き合いも結婚もまだ早いですわ」


 と可愛げなく答えてしまうのでした。



=END=

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年上の男性はお好きですか? いいえ自立しているのでそのお誘いは結構です 茄子 @nasu_meido

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