第3話 ビキニアーマーの最初で最後の出番(になるはずだった

 翌日、宿を出発するにあたり、私は約束通りにビキニアーマーを装備していた。


 しかし隣を歩くロランは「はあ…」とため息をつく。

 それはなぜかというと、私が全身をすっぽりと包むマントを身につけていたからだった。


 街なかを、あれだけを身につけて歩く度胸は私にはなかった。

 だって下着姿で外を歩くのと一緒だし。

 なので昨日のうちに調達しておいたのだ。出発を遅らせたのはこのため。


「ちょっと、そこまで露骨にがっかりしないでよ」

 私はロランをたしなめる。ちょっと悪いかな、とは思うけど、ため息をついてうなだれながら隣を歩かないでほしい。


「魔物と戦う時、周囲に他に誰もいない時はマントを脱いであげるから、それで我慢してよ」


「ああ。そうだな。それを楽しみに、早く魔物のところに行くとするか! まずは村に行って情報収集だ! 行くぞ!」

 私の言葉を聞くと、ロランはとたんに元気になり、いきなり駆け出した。


「切り替え早すぎでしょ! ちょっと待ちなさい!」

 私はあわてて追いかけた。


「待ってくださーい!」

 と言いつつクレアが追いかけてきて、


「やれやれ」

 と言いつつバートンが追ってきていた。


 だいたいいつも、こういうパターンで私たちは行動している。

 ロランが突っ走り、他のメンバーは後を追いかけていくのだ。

 ロランはやたらと行動的なので、少なくとも退屈はしないですんでいる。


 

 その後、駅場で馬を借りて移動し、私たちは昼前までには目的の村に到着していた。

 そして依頼主である村長さんから、近くに居着いたという魔物の特徴をたずねたのだった。


「それがですな、村の自警団の者たちが退治に行ったところ、みんな調子を崩して帰ってきてしまいましてな。いまは向こうからは手を出してきていないのですが、放っておくわけにもいかないので、依頼を出したというわけなんです」

 かなりご年配の様子だったが、話し方はしっかりしていた。


「調子を崩した? ケガをしたとかでなく」

 ロランが村長さんにたずねる。


「そうなんです。頭が痛くなったとか、腹を壊したとか、みんなそんな様子で、戦うどころではなかったようなんです」


「クレア、バートン、どう思う?」

 ロランが2人にたずねる。


「そうですね。この魔物は呪術を使っている可能性が高そうですね」

 クレアが答えた。


「そんなところだろうな。体調を崩すくらいなら、たいした呪いではないだろうが」

 こちらはバートンの回答。


「ならちょうどいいじゃない。この盾なら軽い呪いなんてはじいちゃうでしょ」

 私は左手に装備したイシュタルの盾を、ここぞとばかりにアピールした。

 我ながら、ちょっと浮かれているかもしれない。


「おお。私は武具には詳しくありませんが、とても立派な盾ですな」

 村長さんが目をみはって驚いてくれる。とても気分がいい。


「そうだな。さっそく盾が役に立つようでよかったぜ!」

 ロランがうれしそうに言った。


 そういうわけで、いつもどおりではあるが、私が盾を持って先頭を行き、呪いを防ぎつつ魔物を退治する、ということになった。

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