第6話
小笹一美と出会ったのは6月。珍しく雹が降った年だった。最初、小笹は警戒して、自分の下の名前しか名乗らず、年も、いくつに見えます?と誤魔化して自身の情報を伝えるのをなんとか最小限にしていた。背がわたしよりは少し高く。高身長な部類だと感じた。なぜなら健斗は体重100キロ超え、165センチだから。好きでは無いが、わたしは健斗一筋。一美とはメイクの話をしたり、こっそり渡した雑誌の感想、薬による副作用の便秘の日数まで打ち明けた。一美は新参者だったが、みんなとすぐ打ち解けた。打ち解けたいうか、病棟のみんなは正気、と言うものを疑われても仕方のない時がある。
一美は、たった1週間で退院してしまう。
優秀だ。
そう感じた。
病気に劣等も優秀も何もないというのに。
わたしは言う。
一美ちゃん。
わたしのこと、わすれないでね。
だってもう少しずつ、社会でわたしを知っている人は少なくなっている。ある日の電話で健斗に相談した。
結婚する?
結婚?けっこん。入院中でも婚姻届書けるの?わたしは思考が停止しながらも打算だけはするようなおかしな頭の回転を見せる。
退院前の一美ちゃんに相談した。
その相手、ぜったい、逃しちゃダメ。
わたしは太田健斗と結婚することにした。
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