第15話 寝込み、そして、朝を迎えて・・・
車内は寝静まっている。
今日は特に起きて話のひとつもしている区画さえ見当たらない。
少なくとも、この車両は。
その数分後。
廊下の灯りがただでさえ暗いにもかかわらず、さらに暗くなったような気が。
もっともそれは数秒のこと。室内灯は程なく減光時の通常の明るさに戻った。
ここで、交流から直流へと切り替えられたのである。
程なくして、勾配を下がっていく感覚が横になった体に染み入ってくる。
外を見やると、明らかに暗い。
これが関門トンネルだな。
勾配はやがて上りになり、車外の音も幾分変わり、再び列車は止まった。
ここは下関。
しばらく停車しているうちに、堀田氏はうとうととし始めた。
ちなみにこの列車の下関着は0時57分、発車は0時59分。
発車した頃には、もう寝入ってしまった。
ようやく、寝酒の効果が出てきたようである。
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目が覚めたときには、列車は停まっていた。
のぞき窓から外をみると、駅の向うに海が見える。
どうやら、尾道に停車中の模様。
寝台車には、さほど乗降客はいない。
もっとも、すぐ後ろのグリーン車には、何人かの乗車客がいる模様。これから岡山まで移動して、そこから大阪や東京方面に向かう人であろう。
この列車に乗れば、東京には昼前、大阪であれば8時過ぎには到着する。
程なく列車は動き始めた。
この時期の夜明けは早い。
幾分明るくなってきた海の向うにある向島と造船所を右側に見ながら、列車は早朝の瀬戸内をひたすら東上していく。
車窓の海も途切れたところで、教授はのぞき窓を閉め、もう一度目を閉じてしばらく横になったまま、考えるともなく考え事をしていた。
うとうとしていたら、また列車が停まっていた。
ここは福山。グリーン車に何人かが乗り込んでいく。
いちいち斥候兵よろしく見に行くつもりもないが、どうやら、朝早くから関西方面への出張で出向く人たちであろうと思われる。
再び列車は走り始める。
まだ早朝の6時前。すでに、夜は明けている。再びうとうとすること約20分。
ついに、車内に設置されたスピーカーから鉄道唱歌のオルゴールが流れ始めた。
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