後編 ~電車寝台でのひと眠り
第12話 ひと風呂浴びて、寝台電車特急に乗る
福岡市内での2日間にわたる学会の仕事を終え、O大学理学部物理学科教授で理学部長を兼務している堀田繁太郎氏は、学会の飲み会を終え、ひと風呂浴びて博多駅にやってきた。
時刻は23時を幾分回った頃。
すでに駅前の売店は軒並閉っているが、駅構内のホームの売店はまだ営業中。弁当や飲物等も販売している。
彼は早速、缶ビールを2本買込んだ。これが彼の寝酒である。
一昨日前の朝もらったバーボンのボトルは半分以上残っているが、残暑の中、ウイスキーで体を温めるより、冷たいビールを風呂上がりに行きたいところだ。
程なく、寝台電車がホームに入ってきた。
乗車するのは、パンタグラフ下の中段寝台。ここに上段はない。
この知識は、彼が岡山に赴任してきた時に知合った米屋の山藤豊作氏の知人の酒屋の息子から得たもの。それを知った堀田氏は、早めに岡山を出る前に窓口に行ってその寝台券を購入しておいた。人気故取りにくいと言われていたが、特に混んでいる時期でもないので難なく確保できた。
2日前の往路は、「つばめ1号」に乗車した。
岡山発朝7時35分。
大阪方面からの新幹線の乗継もあるが、朝から動く人はさほど多くないこともあり、向い合せの寝台兼用の電車特急のボックスシートでゆったりと過ごせた。
博多到着後は翌日に向けての準備を終らせ、その勢いで博多の街で同じ学会の知人らと旧交を温めていた。
彼はその前夜祭の飲み会で、立命館大学理工学部教授の石村修氏と再会した。老母は70代後半だというが、まだまだお元気であるとの由。堀田先生によろしくとしきりに申しておりましたと、石村氏は堀田氏に伝えている。
学会も無事終り、さらにこの日も打上げと称して早くから飲んでいたが、翌日のこともあるから、堀田教授は博多の街から早めに帰路に就くこととなった次第。
石村教授は、少し早い時間の夜行列車ですでに京都へ戻る途上。
博多駅前にはサウナもある。
そこで堀田氏はひと風呂浴び、汗を流した。9月なので、まだ暑い。
そのサウナにはクリーニングサービスもあるため、これまでのワイシャツや下着などをすべてクリーニングしておいた。
これで、さっぱりと帰れる。
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