第4話 いよいよ、旅の始まり。
かくなる上は、突き返すような理由はどこにもない。
堀田氏は、喜んで拝領した。
「ほな、ありがたくいただきます。列車やホテルで飲んでおれば、3日後にはきれいに飲み切れるでしょう」
「いや、無理せんときなさい。どうせ現地で、石村さんはじめ酒の好きな学会関係者らと飲むのでしょうが。残ったら、またうちで飲む足しにすればよろしいがな」
「大丈夫です。無理はしませんって」
「ほな、堀田君、そろそろ出向かれたがよかろう。今日のモーニングは、もちろん私が払っておくから、是非とも、戦利品を期待いたしております。帰って来られたら、この週末にもぜひ、一杯やりましょう。残ったらこのバーボンで明太子じゃ」
「了解です。それでは、行って参ります」
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山藤氏に地下改札まで送られた堀田教授は、改札を越えてすぐのホームの階段を上る。ここは山陽本線下りホーム。
岡山操車場で一夜を明かし昼間の特急としての準備を整えたエル特急「つばめ1号」が、ほどなく入線。
折戸が開かれ、客が続々と乗り込む。
とはいえ、岡山を朝1番のこの列車に、大阪方面からの乗継客はそれほどいないためか、定員の半分もいかない程度の乗車率になりそうな模様。
青とクリーム色のツートンカラーの581・583系電車の12両からなるこの系列の電車、夜は寝台特急として活躍しつつも、昼間はこうして座席を使った特急列車となっている。
普通車は夜に寝台となるため、昼間は少しゆったり目のボックスシートとなる。
混んでいればともかく、空いている車内では、一方向に向けられたロマンスシートと呼ばれる座席よりもゆったり過ごせる。
堀田教授は荷物を網棚に乗せるわけでもなく、進行方向に向かって確保した窓側の指定席の横に荷物を置いた。
そして、自分は指定されている席に座った。
今回の座席は、本州では海側になり、九州に入ると山側になる。
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7時35分の定刻。
列車は静かに、岡山駅を出発した。
ほどなく、車内に鉄道唱歌のオルゴールが流れる。
出発後の車内放送の開始。
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