第356話 アーツの選択 後半
▽第三百四十三話 アーツの選択 後半
シヲとロゥロの試しを終えた私たちは、とりあえず食事の時間にしています。私は食べられませんけれど、アトリは食事を楽しむことが可能ですからね。
この空間では空腹にはなりません。
ですが、食事をしてはいけないわけではなく。
セックが見事な給仕で食事を次々と出す中、私はステータス欄を見ていました。
「せっかくの機会です。アトリのアーツも取ってしまいましょうか」
「たくさんある。です」
「そうですね。アトリのコンセプト上、とくにほしいアーツもありませんでしたしね」
元々、アトリのコンセプトは「リジェネアタッカー」でした。
大抵の攻撃を無視して突撃、最後には首を狩って終了のパターンを狙います。が、今のアトリは「高速アタッカー」に変わり、今では「回避アタッカー」になっています。
回避型の弱点である被弾についても対処があり、被弾したとて回復できます。
やることはシンプル。
避けて避けて斬る。
ゆえに複数のアーツが不要になっていたわけです。が、それでは今後に響くのでアーツを取ってしまいましょう。
まあ必要になったら取るでも良いのですけれど。
「今のアトリに必要な【光魔法】ですか。難しいですね。アトリ、意見はありますか?」
「神様にお任せ。ですっ!」
「……【オール・ブースト】も悪くはないのですが」
アーツ【オール・ブースト】は【光魔法】に於ける最強のステータスバフとなっております。その前提条件が【アタック・ブースト】【マジック・ブースト】【スピード・ブースト】【ラック・ブースト】【ガード・ブースト】をすべて取得していること。
アトリは現在【マジック・ブースト】と【スピード・ブースト】を所持しています。
そして【ラック・ブースト】は必ず取ります。
残ったスキル枠はちょうど三つ……ええい、もう取ってしまいましょう! 現在、完成しているということは失敗したところで問題がないということ!
私は一気に【ラック・ブースト】【ガード・ブースト】【アタック・ブースト】を取得、そして解放された【オール・ブースト】を取得しました。
アーツ【オール・ブースト】の効果は「すべてのステータスが大きく上昇する」というもの。
一見、強そうに見えますが取らない人は多いです。
このゲームは死にステータスがいくつかあり、その中でも【耐久】が役立たずなのです。特化すれば強いのですが、耐久振りで強いキャラなんてヘルムートくらいしかいません。
あと動乱の世代にも一人いましたか。それくらいです。
攻撃優位なのがこのゲームのシステム。
その【耐久】を上げる【ガード・ブースト】の評判がすこぶる悪い。
普通に【ガード・ブースト】があって耐久振りでも、当たり前のように武器で腕を斬られれば切断されるゲームですからね。
攻撃を上げる手段はたくさんあれど、耐久を上げる方法が乏しいが故の結末でしょう。このゲームで耐久したかったら盾を使うか、武器で防ぐか、HPを特化して上げるのが得策。
「……ああ、でもアトリには【ティファレトの一翼】がありましたか」
「ある! です」
アトリが微妙に発光する左腕を見せつけてくれます。
力こぶはできません。ぷにぷにの幼女腕があるだけですが、今のアトリならば中途半端な敵は撲殺できるのだからステータスって恐ろしい。
アトリには部位耐久度を上昇させる【ティファレトの一翼】があります。これに加えてステータスを大幅アップさせる【ヴァナルガンド】も考えれば、わりと【ガード・ブースト】さんにも使い道があるかもしれませんね。
わりとシナジーアーツだったのかもしれません。
「【オール・ブースト】は手間がなくて良いです」
「ですっ! たくさん発動しなくて良い! です! 便利! ですっ! さすが神様……ボクのことを考えてくれている……です……」
アーツ【オール・ブースト】は他の【ブースト】と重複しません。が、他の全ブーストが一気に発動でき、なおかつ補正値もより高いようですね。
消費MPも纏めることによって、ちょっとだけお得です。
不人気な理由は「ステータスバフだけで6枠取られる」からでしょう。しかも、そのうち5つが無駄になるわけでして……アトリみたいなステータスで戦うタイプ以外は厳しい。ステータスバフもべつに「異常に強くなる」わけではありませんしね。
光魔法使いはヒーラーもアタッカーも支援も妨害もできる分、支援特化にはし辛いようです。
よく言われているのが【光魔法】使いは大人しく回復しとけ、問題があります。
純粋なヒールは【光魔法】の領分ですからね。
アトリはついぞ基本アーツである【ヒール】も、とりあえず取っておけと言われる【パーティー・ヒール】も取得しませんでした。
だって自分しか基本的には回復しませんし、それなら【再生】ありますしね。
我々は自分を優遇しているのです。
▽
続いて【鎌術】についてでした。
これについては80まで獲得済みです。改めて情報を整理しつつ、最後に取る「奥義」についても考えていきましょう。
一覧です。
1首狩り
首に命中時、防御力無視とダメージ5倍。
10
HPを奪う効果を刃に付与する。与ダメージに依存するHP回復効果。。
20弱点特攻
弱点に命中時、あるいはクリティカル発動時ダメージ上昇。
30
確定クリティカルダメージを与えるアーツ。あくまでダメージ補正がクリティカルになるだけ。
40
空中で急停止し、縦回転して斬り付ける攻撃アクティブアーツ。MP消費で連発可。
50
攻撃命中時、敵の敏捷値を下げる。上限あり。
60
回復を禁止する刃を付与する。効果時間は短めだが連続で命中させれば増える。
70
斬った箇所を弱点判定に変える力を刃に付与。
80状態異常時超特攻
敵が状態異常時、最終ダメージが2倍上昇。
ここまでが取得済みのアーツでした。
これからは新規取得アーツとなりますけれど、言うほど選択肢は多くありません。ゆえに取得したのはこちら。
90クリティカル時追加ダメージ
クリティカルの時、敵に固定ダメージ付与。
よりクリティカル時のメリットを追及してみました。せっかく確定クリティカル判定アーツがあるわけですしね。活かしていきましょう。
そして最後の鎌の奥義です。
鎌の奥義は二種類。
ひとつが【
数少ない鎌術100到達者は、このアーツを取って崩技を発動する人もいるとのこと。
矛盾した刃系アーツを同時発動してバグらせるようでした。
そして二つ目。
こちらは【
なんと召喚系です。指定した空中に巨大なギロチン刃を出現させます。鎌アーツなのにギロチン……そのギロチンが落ちて防御力無視の特大ダメージを与えます。
まあまず間違いなく命中しません。
これだけだとロマン雑魚技なのですけれど、この奥義はそれだけではありません。ギロチン出現時、大鎌による攻撃が対象に10ヒットした場合、ギロチンが強制命中するのです。
奥義発動中、鎌が首に命中したら一度で強制命中します。
私は後者を選びました。
だって面白そうですし…………実戦での使用が待ち望まれます。
稀少な鎌100到達者は後者を取る人のほうが多いようでした。
この奥義を主軸に戦うようになるようです。発動したら10発当てるだけで勝てるようになりますからね。
取り回しの難しい武器で慎重に戦ってきたのが馬鹿らしくなるほど、このアーツは革命的なようでした。あと面白い。なにより面白い。
こうしてアーツ選択を終えました。
まだ【月光鎌術】と【閃光魔法】については未取得アーツがございます。が、そちらは奥義を見てからでも良いでしょう。
とくに【月光鎌術】については奥義が不明です。
情報がまったく掲示板に出ていませんから。これで取得したアーツと相性が悪かった場合、とても困ったことになりますからね。
育成こそがこのゲームの真骨頂。
うっかりした選択をせぬためにも、ゆっくりと時間は使っていきたいところです。かといって、もうこの時間停止空間はこりごりですけれど。
一刻も早く、アトリには空間を切断する領域へ居たってもらわねば……
こうして我々の「修業の間」での時は過ぎていきました。
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