第355話 アーツの選択 前半
▽第三百四十三話 アーツの選択 前半
二ヶ月が経過しました。
アトリのスキルは戦闘もしていないのに良い上がり具合です。とくに【天使の因子】については98レベルにまでなりました。
凄まじい成長速度です。
毎日、すべての因子を超過解放しているのが良いようでした。
この世界、0時ちょうどにリセットが来ます。
ゆえに23時59分までは因子を隠す形でスキルレベルを上げ、ラストの一分で一気にすべてを超過解放していきます。超過解放のほうが取得経験値が多いのです。
すべての因子が揃えば飛べるようになるとのこと。
飛行ユニットがめちゃ強なのが《スゴ》の仕様。空から魔法と鎖で爆撃し続けるアトリの姿が目に浮かぶようですね。
名前【アトリ】 性別【女性】
レベル【100】 種族【ハイ・ヒューマン】 ジョブ【使徒】
魔法【閃光魔法98】【光魔法100】
生産【造園100】
スキル【孤独耐性96】【鎌術100】【口寄せ100】
【詠唱延長90】【月光鎌術95】
【天使の因子98】【狂化】【聖女の息吹】
【光属性超強化91】【鎖術88】
ステータス 攻撃【264】 魔法攻撃【827】
耐久【498】 敏捷【773】
幸運【664】
称号【死を振りまく者】
固有スキル【殺生刃】【勇者】
【
こういう成長具合でした。
あと少しでカンストというスキルも増えましたね。
また【光魔法】【造園】【鎌術】に続き、ようやく【口寄せ】もカンストしてしまいました。口寄せのアーツも取りきってしまいましょう。
といっても、【口寄せ】ってあまり面白いスキルではありません。
最善を目指した場合、選択肢が少ないのです。
結局、アーツの割りはこうなりました。
1、使役契約
10、スキル枠増加
20、スキル枠増加
30、レベル上限上昇
40、使役契約
50、レベル上限上昇
60、レベル上限上昇
70、レベル上限上昇
80、召喚MP減少
90、召喚速度上昇
これが90レベルまでの構築でした。
いわゆる強者構築というやつですね。基本、召喚系のスキルは「強者構築」と「数構築」と「量構築」の三パターンと言われています。
強者構築は、召喚対象を絞り、レベル上限上昇によって強くするパターン。
このレベル上限上昇がなければ、召喚生物は中途半端に成長が止まってしまうのです。ゆえに「強者構築」ではいくつも取得することが運命付けられてしまいます。
数構築は【使役契約】をいくつも獲る構築。
特殊な能力を持つ魔物をたくさんテイムし、その場その場で使い分けていく構築でした。強くはありませんが厄介な構築ですね。
もう死んでいるようですが、魔教幹部の一人がこの構築だったと言えば厄介さが伝わることでしょう。
最後は「量構築」でした。
これはペニーが得意とする奴ですね。弱い魔物をテイムし、それを【召喚量増加】などで増やしていく構築でした。
ペニーの場合、それ以外にも固有スキルや【大量生産】のスキルなどもありそうですけれど。
最強の召喚術士と言われているエルフの元王子鍛冶師は「強者数量構築」でした。
よほどスキル運に恵まれたのでしょう。
一匹一匹がとても強力なのに、種類も量も多いようでした。あの人だけは召喚術士というよりも、中ボス使いみたいな印象があります。
さて最後の【口寄せ】のアーツとなります。
レベル100に至らねば取れぬアーツがあります。これはいわゆる奥義と呼ばれるモノです。ずいぶん昔、ジャックジャックがゲヘナに使っていた【ヴァニタス・コネクト】がソレ系統です。
口寄せの奥義アーツは三種類。
【口寄せ・倍加の陣】
【口寄せ・暴威の陣】
【口寄せ・死滅の陣】
これでした。
どれか奥義系を獲るのは確定です。だって強そうです……
最初の【口寄せ・倍加の陣】は読んで字の如く、召喚生物の量を二倍に出来ます。要するにシヲとロゥロが二体になるわけですね。
とても強く、そして怖い……
ロゥロはともかく、シヲはどうなっちゃうのでしょう……
続いて【口寄せ・暴威の陣】はステータスを異常に上昇させて呼び出すことができます。ただし、召喚に時間制限が付きます。オン・オフ可能なので使い分けられますがね。
最後の【口寄せ・死滅の陣】は自爆アーツでした。
一日に一度、己が召喚生物を自爆させることが可能になります。かなりの火力になるようで、レベル上限まで至った【口寄せ】使いの七割がコレを獲るようでした。
どうしても【口寄せ】って面白スキルですからね。
召喚できるのは便利ですけれど、めちゃくちゃ強いスキルではありません。基本、スキルレベル100に至れる人は、レベル100の魔物くらいはいくらでも倒せるようになっていますからね。
それを数体召喚したところで、いったい何……という感じになっていきます。
シヲもロゥロも、アトリの戦闘にはついていけません。
シヲもロゥロも特化存在なので、役には立ってくれますけどね。
かといって一級戦力かと言われれば疑問です。
それならば爆弾にしてしまうのもアリでしょう。一気に攻撃手段が充実しますし、いざという時の切り札が増えますからね。
そういう経緯で以て、大半の【口寄せ】使いは【死滅の陣】を選ぶわけです。
私は【口寄せ・暴威の陣】を獲りました。
理由は単純なこと。
天邪鬼でした。あとシヲを自爆させると後でうるさそうですからね。アトリは爆発させたがりますけれど、さすがのシヲも怒るかもしれません。
私たちはチケットでシヲとロゥロの固有スキルを手に入れました。
本来ならばアーツ枠を使って【固有スキル獲得権限】を獲る必要がありましたからね。この枠を潰せたので遊ぶ余地もありましょう。
『――』
べつにシヲに睨まれているのが怖くて【口寄せ・死滅の陣】を選べなかったわけではありません。だって私って邪神だし、エルフ美少女の無言の圧になど負けませんとも。
ついでにシヲたちのスキルも獲ってしまいましょうか。
これまではあえて取得しておりませんでした。理由はいくつかありますけれど、もっとも大きいのは難しいからでした。
今のシヲ、ロゥロでも悪くないのですよね。
ゆえに変なスキルを獲るよりも保留しておいて、より良い結果を探そう探そう……と思っていたらここまで来ました。
本当はすぐに取得するべきなのですがね。
アトリとは違って「早く強くする」必要がない故の失策です。まずはシヲから見ていきましょう。
名前【シヲ】 性別【無】
レベル【92】 種族【パンドラ・ミミック】
魔法【土魔法42】
生産【木工90】
スキル【擬態83】【奇襲73】【拘束77】【行動阻害耐性】
【音波82】【鉄壁75】【触手強化83】
【盾術67】【技巧補正】
【重装38】【HP増大1】
【MP増大1】
ステータス 攻撃【92】 魔法攻撃【92】
耐久【920】 敏捷【920】
幸運【92】
固有スキル【相の毒】
結局、シンプルな結果を残しました。
今更シヲのHPを増やしても、という気がして無視していたスキルです。が、どこまでいってもこれを超えるスキルが見つかりませんでした。
無理にめちゃくちゃしようとする私の悪い癖ですね。
一応【MP増大】が死にスキルになるのですが、これも統合進化させてしまえば役立ちます。無理にシナジーを狙うならば【MP代替】系の力がある装備を持たせればよろしいでしょう。
次にロゥロとなります。
名前【ロゥロ】 性別【不明】
レベル【83】 種族【がしゃどくろ】 ジョブ【デスペラート】
魔法【無属性魔法0】
生産【石像1】
スキル【暴力補正】【攻撃上昇85】【握撃】
【アンデッド補正】【浄化耐性】
【破壊術73】【致命回避】
【格闘術52】【攻撃補正】
【初撃強化】【渾身強化】
ステータス 攻撃【1245】 魔法攻撃【0】
耐久【0】 敏捷【415】
幸運【415】
称号【亡者の群衆体】
固有スキル【
かなりシンプルにまとまりましたね。
レベル上昇のないスキルを選べたので、これまで取らなかった悪影響は少ないでしょう。
新規取得したのは【攻撃補正】【初撃強化】【渾身強化】の三つです。
攻撃補正は攻撃力が上昇します。
スキル【攻撃上昇】と異なるのは%強化だという点ですね。どちらも取れば当然ながら数値は跳ね上がります。
ロゥロの攻撃ステータスは脅威の【1245】……これに【攻撃上昇】【攻撃補正】が乗るので馬鹿火力となりましょう。
他にも色々と火力を上げる能力だけが揃っていますからね。
次に取得したのは【初撃強化】です。
掲示板によると「微妙スキル」とのこと。このスキルは最初の一撃の威力を上昇させるスキルとなっております。
上昇値は莫大。
なれど、最初の一撃だけですからね。暗殺特化ビルドとかでないと役に立ちません。てきとーに取っても弱いスキルです。
私の知り合いではミャーが取得したようですね。
ロゥロは初撃が大事なキャラ。
とても噛み合っていると言えるでしょう。また、呼び直す度に初撃判定されるようなのでそこもシナジーでしょう。
呼び直す度にMPが必要なので、拘る必要性はありませんけれど。
「アトリにできないことができる。強くはありませんけれど、やはり取っておいて損のないスキルではありましたね」
「……む」
アトリの頭を闇の腕で撫で付けました。
こうしてアトリ、シヲ、ロゥロが並べばまるで姉妹のように……は思えません。けっこうジャンルが違いますからね。
死神幼女。
エルフ美少女風ミミック。
くたびれ系ゴスロリお姉さん。
全員がダウナー系ではありますけれど、ルックスだけでなく方向性が違いますからね。集合のし甲斐があります。
「最後にアトリ【口寄せ・暴威の陣】を使ってみましょうか」
「です!」
アトリの足元に奇っ怪な陣が出現します。
西洋風の魔方陣ではなく、和風で禍々しい召喚陣でした。大量のお札が剥がれていき、陣がゆっくりと開きます。
なるほど。
召喚速度が遅くなるデメリットもあるようですね。
りんりんりんりん、と鈴の音が何処から響きます。
「【口寄せ・暴威の陣】……刻限一没」
陣からシヲとロゥロが再出現します。
一見するだけで今までとは格が違うことが解ります。見違えましたね。
このスキルは十段階あり、下がっていくごとに召喚時間が減って効果が上がります。刻限一没はもっとも強力な運用方法ですね。
大鎌を構えたアトリが、静かにロゥロと向き合います。
「ロゥロ、攻撃をして来ると良い」
『がらあああああああああああああああ!』
ノータイムでロゥロの拳が振るわれます。
大鎌を盾に防ぐ体勢のアトリは、ロゥロの一撃をまともに喰らい――その勢いで【致命回避】が発動してしまいました。
もしも【致命回避】がなければ、肉体が木っ端微塵にミンチ化されていたことでしょう。
数百メートルも吹き飛んだアトリ。
大ダメージを気にもせずに綺麗に着地。静かにMPを犠牲にHPを回復していきます。
幼女は軽く首を回して見せました。
「良い火力。でも……」
「使い勝手は悪そうですね」
「です。出てくる時間長い……です」
ロゥロの敏捷値は高くありません。
せっかく火力が高かろうとも当てねば無意味。ゆえにロゥロは奇襲気味に出すのですが、【暴威の陣】は仰々しい召喚エフェクトが発生するので難しいでしょう。
「アトリかシヲが拘束した敵を一撃死させる、みたいな使い方でしょうかね。まあ選択肢は増えたと言えましょう」
こくこく、とアトリが頷きました。
シヲの拘束力も高まっていることでしょう。ただアトリが検証を嫌がったので保留です。実戦で使えるタイミングがあれば使いましょう。
やがて鈴の音が消え、シヲとロゥロも消えてしまいました。
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