第351話 何事もなかった
▽第三百四十話 何事もなかった
オリバーを殺しました。
銃の乱射をすべて鎖で叩き落としながらゆっくりと近づいていって……背後からロゥロを出して叩き潰しました。
死体を蘇生させ、改めて【ダーク・ダーツ】でトドメを刺します。
やはり【ダーク・ダーツ】は悪くないアーツですね。他のプレイヤーが獲るのは推奨できませんけれど、少なくとも私が獲る分に於いては優秀でしょう。
遠隔で安全にトドメを刺せますから。
このゲーム、わりと誰も油断して相手できないので、遠隔確殺は安心感があります。
「ふう……わりと強かったですね、アトリ」
「です……苦戦した。です」
カラミティーレベルの使い魔は厄介でした。
が、正直なところ、使用者がガストロだったので恐怖は少なかったですね。大鎌リッチの厄介な性能を使われず、純粋なアタッカーとしての運用だったのが勝利の要因でしょう。
おそらく、ガストロでは大鎌リッチのギミックを発動するMPがなかったのかもです。
それでも純粋にカラミティークラスのアタッカー(しかも即時復活する)は強かったですが。大鎌リッチへの対応は常に切り札を使うか、諦めて受けるか、みたいな対応しかできませんでした。
ギリギリでしたね、じつは。
最初にタンク役のティティリーを落とせたのも良かった。
ちなみに戦闘後、スキルレベルがびっくりするほど上昇しました。
アトリが飲まされた薬はかなりの効能があったようですね。しかも、魔教幹部はレベルカンストしていますし、カラミティーレベルの敵も現れました。
一気に【鎖術】がレベル80にまで上がりましたからね。
アトリの現時点でのステータスはこんな感じです。
名前【アトリ】 性別【女性】
レベル【100】 種族【ハイ・ヒューマン】 ジョブ【使徒】
魔法【閃光魔法96】【光魔法100】
生産【造園100】
スキル【孤独耐性96】【鎌術100】【口寄せ95】
【詠唱延長85】【月光鎌術92】
【天使の因子93】【狂化】【聖女の息吹】
【光属性超強化88】【鎖術80】
ステータス 攻撃【264】 魔法攻撃【827】
耐久【498】 敏捷【773】
幸運【664】
称号【死を振りまく者】
固有スキル【殺生刃】【勇者】
【
むしろ、今回の戦闘はアトリ強化イベントだったのでは?
なんて思わされるほどでした。
カラミティーは基本的にレベルカンストが100人で挑んでも蹂躙されます。むしろ、スキルレベルがカンストしなかったのが不満なくらいですね。
鎖術のアーツを取得していきます。
一応、一覧しておきましょうか。
レベル1時取得【鎖操作向上】
鎖の操作性が向上する。
レベル10時取得【
鎖がドリルのようになって貫通力の高い刺突が可能になる。
レベル20時取得【
鎖で牢獄を作る。アトリは壁だけを作って防御に使います。
レベル30時取得【
敵を拘束するネット状のアーツ。
レベル40時取得【
敵を鎖で薙ぎ払う。魔力を支払えば鎖の数を増やせるようです。けれど元々本数が多いですから使わないかもしれません。
レベル50時取得【
鎖の数を増やして、分銅で敵を殴るアーツ。さながら餌を貪る八岐大蛇が如く。まあ、八どころか百くらいになりますけれど。ラッシュ系。
レベル60時取得【鎖威力上昇】
鎖の威力が上昇する。
レベル70時取得【色変化】
鎖の色を自在に変化させる。
レベル80時取得【粘の鎖】
鎖が触れた対象に粘着するようになる。
と。
こういう感じのアーツ構成にしてみました。サブウェポンとしても機能したり、絡め手にもなりますし、壁にもなりますし、敵を拘束することも可能となります。
メインにするには頼りなくても、サブとしてはかなり有用な気がしますね。大鎌ではできない動きが可能になりました。
また、【天使の因子】もレベル90を超えてくれましたよ。
取得したアーツは【ゲブラーの一翼】……バフ効果は「HPダメージ反射回復」でして、解放効果は「自身に強烈なステータス減少デバフ。一定時間後、敵にそのデバフを移す」というもの。
正直、解放効果は使いません。
が、アトリもやろうと思えば致命的なデバッファーになることが可能になりましたね。今は【奉納・絶花の舞】もあるのでHP反射回復も便利でしょう。
昔まではオーバースペックな回復だったので獲る意味がございませんでした。
今ならば切り札の効果時間を延ばし、リスクを軽減させるアーツとして使えます。
アトリも自分のステータスを確認し終えたようです。
無表情で気怠げにも見える万歳を披露してくれます。
「【神偽体術】もレベルアップ。です」
「これも新アーツが取れますね。……【
「神様にお任せ! です!」
「どちらも結局獲りますしね。今回は【災破の舞】にしましょう」
「する! です! また神様に近づけた。です……!」
アトリが赤目をぐるぐるさせる中、新しいアーツを取得しておきました。
この【奉納・災破の舞】の効果は「障害物を透過する」というアーツでした。アトリの速度を邪魔する空気抵抗なども透過できるようになり、アトリの速度がさらに加速することでしょう。
かつて取得していた【
あちらは魔力を帯びている障害物は透過できませんでした。ですが【災破の舞】はMPを支払えば魔力のある障害物も通り抜けられます。
つまり、魔法で作られた壁なども平然と通り抜けていけます。
私の方針によってアトリはあらゆる場面に対応ができます。純粋な戦闘能力という意味で最強になることは難しいでしょう。
ですが、今のアトリはあらゆる場面で強い。
そういうキャラになりましたね。
▽
リリーシアが目を覚ましました。
土埃塗れのドレス……億劫そうに上体を起こして、キョロキョロと周囲を見回しております。
やがて月光を背に負い自身を見下ろすアトリを見つけ、ぱちくりと瞬きを行いました。
「……こ、ここは。アレックスさまは? ……たしか。ああ! 魔教に襲われて誘拐されて、それで!?」
「何もなかった」
混乱し始めたリリーシアに向け、冷たくアトリは言い放ちました。
愕然とするリリーシア。
ようやく彼女が見つけたのはオリバーたち、魔教幹部たちの亡骸でした。漆黒のドレスを返り血で染めた幼女は、月明かりを背景に赤い瞳に光を帯びます。
「何もなかった。良い?」
「え、あ、……はい」
「じゃあボクは舞踏会に戻る。お前も後で来ると良い」
それだけ言い残してアトリは現場から立ち去りました。
地べたから去りゆく幼女の背中を見上げる第五王女……混乱の極みにあった彼女の脳がゆであがるのが傍から見ても理解できてしまいます。
「お、お待ちになって……」
そういって切なそうに幼女の背に手を伸ばすリリーシア。もちろんアトリは待たずに鎖を使って街を飛び回り、すぐに王城に戻ってしまいます。
遅れてジークハルトたちが兵士を連れて王女殿下を回収したようですね。
門番がすぐに知らせに行ってくれたのでしょう。
こうして事件は広まる前に終結。
アトリはドレスが返り血で汚れましたけれど、連れてきたセックが【お洗濯】ですぐに綺麗にしてくれましたよ。
アトリは舞踏会の華となりました。
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