第323話 神器の強化強化
▽第三百二十三話 神器の強化強化
わらしべイベントによって手に入れた青い石で神器を強化していきます。今回はゴーシュに依頼するのではなく、セックにお任せすることにしました。
ゴーシュの鍛冶を見て、セックは「完璧に会得しました」とずっと主張していますからね。
一応、セックのメイン生産能力は【鍛冶】となっております。
スキル【お手伝い】で理論上はすべての生産が可能となっている彼女ですけれど、それでも得意不得意で言えば魂に刻まれた【鍛冶】こそが本領の発揮でした。
仮に失敗しても、ゴーシュが言うには「石がなくなるだけだ」とのこと。
その後、元エルフ王子はこうも言いましたけれど。
「『失敗する鍛冶師なんていねえがな。失敗した奴は鍛冶師じゃなく、実力を把握できてねえ素人だ』……ふふ、完璧なわたくしに対する挑戦状と受け取りました」
セックは【理想のアトリエ】にある鍛冶場にて、頭部にぎゅっと鉢巻きを巻き付けます。生産についての補正効果のあるアイテムのようでした。鋭い視線を大鎌と青い石に向けます。
私が作っただけあり、ずいぶんと絵になりますね。
服が余計ですけれど。
「完璧な施術をご覧にいれましょう」
「べつに失敗しても良いですよ、セック。ゴーシュのところへ行く手間を惜しんだ私のミスになりますからね」
「マスター。完璧なわたくしに対する声かけとして、それは完璧に誤っております。マスターは一言『任せた』でよろしい」
「はあそうですか……では、任せましたよ」
セックがお仕事に取りかかります。
失敗しました。
白んだ目でセックを見やるのは、私とシヲでした。アトリは「神様の期待にお応えしたいのは解る」と同情しているようでした。
でも嘘は駄目、とも言いました。
そしてロプトは相変わらずダンジョンに出ていて、遊ばせていたドローミは『きゃきゃきゃ』とセックの周囲をとぐろでも巻くように回転してあざ笑っているようでした。
それでもセックは汗一つ流さず、涼しげで余裕のある表情でした。
「さすがはわたくし。どのような状況でも完璧なユーモアを忘れないようです」
「良いですから。次、お願いしますね」
「はい」
真顔でセックが神器の強化上限解放を施しました。一度のミスをしっかりと糧にして、二度目と三度目については成功したようです。
前回、第六段階まで解放しております。
そして、追加で二段階解放したので、今は第八段階まで強化できる計算となりましょう。あと二段階解放すれば上限のようです。
「強化の方向性についてはどうしますかね」
前回は耐久値を強化して壊れにくくしました。
私たちが今の【死に至る闇】に求めることってなんでしょう。火力については十分すぎるところがあります。
絡め手やサブウェポンについても考えがあります。
今、私たちが【死に至る闇】に求めることは……ないかもしれません。もうアトリのスキルビルドなどは完成しつつありますからね。しかも万能型に育てているので、今さら、ちょっとステータスが上がったところで誤差というのはあります。
私はアトリに任せることにしました。
何を選んだところで失敗はないでしょう。
「アトリ、貴女が決めても良いですよ。……いえ、私は貴女が何を選ぶか解っていますがね。だから任せても良いと判断しました」
「! 神様はボクのこと! ぜんぶお見通し! ですっ!」
「ですね。頑張りましょう」
「頑張る……です」
アトリは「私に決めてほしい」派ですからね。その意をくみ取って「ぜんぶ解ってるから任せる」という提案をさせていただきました。
私もアトリのことが解ってきたようです。
もうかなり長い付き合いですしね、当然と言えるでしょう。
アトリは床に座り込んで、うんうんと考え込み始めました。五時間ほどそうしているうちに、アトリはカッと目を見開きました。
私はあまりにも暇だったので絵を描いていました。
その絵をいったん放置して、アトリの意見を耳にいれようとします。が、私の闇の手は止まってくれず、結局、アトリの話を聞きながら完成させることにしました。
アトリは大鎌を抱き締めて言います。
「スキルの強化、と変化……です」
「ほうほう。それは良い提案ですね」
「頑張った。です! すべて神様の手のひらの上っ! ですっ!」
「私の手のひらは大きいですねえ」
神器の調整が終わりました。
あとは素材を与えていって、地道に成長させていくことにしましょう。一応、完成予想(ステータスについてです)のステータスを表示しておきましょう。
大鎌【死を満たす影】 レア度【ユニーク】
レベル【80】 ライフストック【1765】
魔法攻撃【450】 耐久【5300】
スキル【復元】【強化・魂喰らい】
こうなる予定でした。
じつは【死を満たす影】の素のステータスはとても高いわけではありません。ユニーク装備にしては攻撃補正値も低めですね。
その代わりに【魂喰らい】というスキルがあるわけですが。
さらに神器化すれば効果が高まります。
今回は【魂喰らい】の効果を強化し、また神器化した時につく【混沌付与】を調整させてもらうことにしました。
この【混沌】という状態異常の扱いについては難しい。
要はステータスの数値を変動させる状態異常でした。たとえば「攻撃力」と「敏捷」値を入れ替えたりすることができるわけですね。
敵のスキル構成やコンセプトを破壊できる、強力な状態異常ではあります。
ですが、場合によっては敵へのバフにもなります。効果がランダムな所為ですね。ギャンブル効果は安定性を失います。ゆえに扱いが難しい、としたわけです。
あとアトリは一撃必殺がコンセプト。
それに対して「何度も攻撃を命中させる」ことが条件の効果は合いません。
おそらくラッセルなどには効果が出ていたでしょうけれど、ああいうタイプって満遍なくすべてのステータスが高いので意味がないでしょう。そういうことも含めれば【混沌】はあまりシナジーのある効果ではありませんでした。
ですが、武器に付随する【混沌属性】自体は使えます。
闇と光の属性効果が刃に常時付与される効果でした。これは純粋に「斬る」威力が上がるので残したい。
ゆえに調整してもらったのは【混沌】状態を与えられぬようになる代わり、刃に付与された闇と光の威力が上昇するというモノでした。
ゲームでも「毒武器」の毒をあえて無効化して火力をあげる、なんてよくありますよね。
「余計な絡め手を消して、わりと火力が上昇する。良いところ取りですね」
「デメリット扱い。ですか?」
「そうですね。状態異常が与えられなくなる代償に、ですからね。火力の上昇幅は大きいでしょう。【混沌】異常も本当は強い効果ですしね。ギャンブルですが」
かなり神器が強く、使いやすくなりました。
あとは【強化・魂喰らい】の効果の検証が待っています。ヨヨのように「身体能力強化」「生命代替」まで使えるようになったら最高です。
実質、ヨヨの上位互換存在に成り代われます。
最上の領域の上位互換なんて中々に居ませんからね。とくに「ステータス上昇」を手に入れられたらジークハルトさえも倒せることでしょう。
たぶん、このゲームの仕様上、【ヴァナルガンド】や【狂化】なども併用できます。
そこに【奉納・絶花の舞】も加えれば魔王さえも一方的に叩ける能力になることでしょう。
反動が凄そうですけれど。
スキルを試してみます。結果としては……そう美味しいだけのお話もあるはずがなく。
アトリが首を大きく傾げました。
「? よく解らない。です。……魂の吸収効率が上がった。です?」
「そういう強化でしたか。ま、まあお見通しでしたがね。これで効率が上がります」
「すごい! です! 効率!」
どうやら【強化・魂喰らい】の効果は「敵を倒した際、経験値が多く入るようになり、ライフストックに補充される魂の量が増える」というものでした、おそらく。
一体を倒せば二体から三体分の命がストックされるわけですね。
まあ弱くはありません。
どんどん大技を放っていけるようになるわけですしね。事実上の火力アップと継戦能力アップに繋がりました。
それでも「ステータス上昇」と「生命代替」はほしかったですが……仕方ありません。
ともあれまた強くなれましたね。良いことです。
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