第29章 鈴の国の狂乱編
第303話 宣戦布告
▽第三百三話 宣戦布告
「それでは採寸させていただきます、アトリさま」
「うん」
セックがメジャー(私が課金で手に入れた)でアトリを採寸していきます。私もアトリの肢体を観察し、彼女に似合うデザインを検討中でした。
病的な白い肌に似合う色、意匠を考えねばですね。
私たちは今、イベントの報酬のひとつについて着手を始めております。
そう。
カラミティー・レイドボスたるウロボロスのドロップの使用でした。
これでアトリの防具を作るのです。
今まで使用してきた装備は、強いというよりも便利枠でしたからね。【外見維持】があればどのようなダメージを受けても服が破れませんから。
新装備には最低でも【外見維持】が必須でしょう。
素材はたくさん手に入りました。というかウロボロスが大きすぎて、ちょっと参戦した組みでもたくさんの素材が手に入ったようでした。
貢献度二位たる我々ならば、もう余るほどでした。
一位は言うまでもなくジークハルトですね。彼の火力は圧倒的でした。剣士として戦うよりも、振ったらビームが出る棒として扱ったほうが強い、というのは真実だったようです。
剣士としても一級以上なのですがね。
彼はこのゲームで言うところの「パーフェクト・マッチ」でしょう。
要するに生まれつき剣の才能があった、ということです。
このゲームは誰でも後天的に技術を手に入れられます。
才能のないギースが【剣術】を有していたかのように。ですけれど、生まれつき剣の才能を持った人物が【剣術】まで手に入れたら……怪物です。
武器の才能がある人なんて稀少ですからね。
他の「パーフェクト・マッチ」の分類としては命中のルーが挙げられます。あれは【弓術】なのかどうか不明ですけれど。むしろ曲芸?
あと《動乱の世代》の中では、《剣聖の弟子》メリーがそうです。
ただし、彼女は刀を得物にしますけれど、彼女のパーフェクト・マッチは槍でした。なんと彼女は【槍術】しか持っていないのに、師匠が刀使いなので槍を封じて刀を使っています。
多分、メリーが槍を使っていたら、とっくの昔に最上の領域到達者でした。
さて完璧な手さばきにて、アトリの採寸は瞬時に終了しました。
あとは作るのみです。
「そういえばアトリ。どのようなデザインが良いですか?」
「ボクはえっちなのが良い。ですっ!」
「うーん、よくないですねえ」
私もデザインについては考えました。というか、今までの方向性でいきましょう。もうアトリ=軍服ワンピースの図式は成り立っています。
死神幼女の異名的には、ゴシックドレスとかでも良いのですけどね。
あと神楽の動きから巫女っぽい服でもよろしいですけれど……ぜんぶ作っちゃいますか! だってウロボロスって長いですしね。
それでも余ればセックの衣装も作りましょう。
あとシヲの装備も整えたい頃ですね。
彼女は【重装】スキルがあるので重い鎧などが適正装備です。オリハルコンゴーレムたるロプトに使いたかった分を残したので(私が使おうとしたところ、シヲに雁字搦めにされて止められたのです)作れるでしょう。
セックが配下の低級ゴーレムから【防具鍛冶】を借ります。
これにより、元から持っている【鍛冶】と【防具鍛冶】が共存。その他のサポートスキルによって良いモノが創れることでしょう。
元エルフ王子の技術には敵いませんけれど、スキル量だけならば勝利しているはず。
完成が楽しみですね。
▽
結局、軍服ワンピースになってしまいました。
たくさん作ったのですけれど、どうしても【外見維持】効果が付きませんでしたから。このスキルはかなりレアですね。
だとしたら、このスキル付きの衣服を売ってくれたドワーフさんには感謝です。
新たな装備がこちら。
怪防具【永久なる息吹の断片】 レア度【クリエイト・レジェンド】
レベル【100】
耐久【500】 攻撃【100】 耐久【破壊不可】
HP【1000】
スキル【再生強化】【HP超増加】【防御強化5%】【毒無効】
なんて感じでした。
上下装備ですけれど、それを補ってあまりある性能です。
神器化すると純粋にステータスが跳ね上がります。
また、スキルに【ドラゴン・ブレス】が追加されたりしますけれど、正直なところ、アトリに撃たせても意味がありません。
ドラゴン・ブレスは最大HP依存の攻撃です。
アトリは小柄な人類種ながら、おそらくは人類でも最高峰のHPステータスをしています。私の精霊補正がHPですし、【天使の因子】などもありますからね。
とくに【天輪】によって最大HPが事実上の倍です。
まあ、こっちは最大HPには関係ありませんけれど。
そのアトリでさえ【ドラゴン・ブレス】を放ってもドラゴンの下位互換な火力しか出ません。神器枠をひとつ潰してまでブレスを吐かせるメリットが、とても絵面が強そうで面白いという以外ございません。
今度、是非とも撃たせましょう。
ゼロテープさんのようにブレスを撃つためのスキル構成をするわけにもいきませんしね。
「防具も上位のモノになりました。あとは……そうですね」
強化要素が多すぎて管理が大変ですね。
たとえば【天使の因子】では新アーツとして【ケテルの一翼】を取得させました。バフ効果は「全ステータスの上昇」となっております。
わりと良い補正倍率ですね。
そして使用効果が「レベルに応じたドラゴンの召喚」でした。
今までのアトリは低レベルだったので、ドラゴンを召喚するメリットが乏しかったです。私がバフ効果よりも使用効果を重視した結果でした。
けれど、今のアトリならばドラゴンを呼ぶメリットもあるでしょう。
なにせレベル90後半。
もう生みだしたドラゴンはレイドボス級……には届かないかもしれませんが十分な戦力になるでしょう。
まあ、呼ばずにバフだけもらったほうが強いですけれど。
「色々と実戦で試しましょう。久しぶりの外ですよ」
「お外。出る。ですっ!」
ずっと【理想のアトリエ】に籠もっていましたからね。久しぶりの実戦をするために外へ出たところ……我々の目には情報が入ってきました。
ここは第一フィールドの冒険者ギルド。
近場のギルドから【理想のアトリエ】を使っていたのですけれど、そのために掲示板が即座に確認できました。
その木のボードにはこう書かれてありました。
『第三フィールド・鈴の王が最上の領域《死神》のアトリへ宣戦布告!』
どうやら宣戦布告されちゃったようです。
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