第209話 精霊王攻略
▽第二百九話 精霊王攻略
顕現した精霊王の威圧に気圧されてしまいます。
幸いなのは精霊王が【決戦顕現】を使ってこなかったことでしょう。あれは持続時間が3分間の代わりに、ステータスが五倍になります。
精霊の基本ステータスは低めです。
が、相手は精霊王にしてカラミティ。それが五倍になられてはどうしようもありません。あえて倍率低めの【短期顕現】を選んだのは、おそらく遊ぶためでしょう。
「アトリ、気を――」
私が言い終わるよりも早く。
未来視していたアトリがバックステップを踏みます。すると、アトリが居た場所に氷が出現しました。
おそらく、今の攻撃はアトリの心臓があった位置に氷を生み出したのでしょう。
完全なる即死攻撃。
「遊ぶ気あるんですかね」
「神様!」
アトリが太もものホルスターから【敏捷値上昇】ポーションと【MP自動回復】ポーションを取り出し、瓶を噛み砕いて飲み干します。
ガラス片をペッと吐き捨てる。血で赤く染まったガラス片。
水精霊王が指揮者のように手を振り回します。
「遊ぶ。遊ぶ。遊ぶ!」
アトリは全力疾走で水精霊王の氷を回避していました。
未来視がなければ、すでに何十と殺されていることでしょう。
派手ではありませんが、圧倒的としか言えません。
パリンパリン、と氷が爆ぜる音が連続する中、私も何かをしようとして――周囲が氷に包み込まれていきます。
「私まで攻撃しますか」
通常、精霊にはダメージが入りません。
ゆえに精霊を攻撃するメリットはないのです。ですが、氷で拘束して視界を塞がれてしまうのは、私の機能停止を意味します。
さすがは精霊を統べる立場にありますね。
精霊対策は完璧のようでした。
私のステータスでは破壊できない氷壁に包み込まれてしまいました。アトリは私を救出する余裕はなく、ロゥロも暴れているために救出は不可能。
シヲも攻撃力が足りていません。
私は溜息を吐いてから【アイテムボックス】よりアイテムを取り出します。
それは私が【月収爆弾】と呼ぶアイテムでした。
40代サラリーマンの平均月収にも到達するお値段の爆弾です。それを二つ。私は悲しい気持ちになりながら、自分を巻き込む形で爆弾を使用しました。
破壊される氷壁。
飛び出した私は【クリエイト・ダーク】で水精霊王の視界を塞ぎます。
同時、シヲが敵に向かって駆け出します。
精霊王は闇を一振りで払い、近づいてくるシヲを氷漬けにします。【行動阻害耐性】のあるシヲは凍結状態を無効化し、無事に水精霊王に接近しました。
その手には、私が持たせた【月収爆弾】が五つ。
「ばーん、ですよ」
シヲが精霊王に抱きつきます。
と同時、私は【月収爆弾】を起爆しました。周囲が壮絶な爆風に飲み込まれます。
▽
さすがの精霊王とはいえ、大爆発の前に吹き飛ばされてしまいます。体躯は華奢なので吹き飛び安いのでしょう。
その隙に、我々は大猿を仕留めようとします。
ですが、肝心の大猿は……四方を大瀑布によって守護されていました。水属性は万能属性と言われていますが、精霊王のソレは中でも抜きん出ているようですね。
少なくとも、私の【ダーク・ネイル】なんて貫通する気配もありません。
滝を殴りつけたロゥロも、滝の威力に拳が跳ね返されてしまう始末です。
一応、今のライフストック量ならば【
失敗すれば次はありません。
いえ、【テテの贄指】があるので一回のミスは帳消しにできますが。
残念ながら【
シヲに【
悲しいかな【
まあ、アトリの性格上、あそこでシヲに使わないのはおかしいです。自分のための敵への備えよりも、私に攻撃した対象への全力粛正が優先されるのがアトリですからね。
そこはアトリというNPCと契約した以上、飲み込むべきデメリットでした。
連続する心臓狙いの氷結攻撃を躱しながら、アトリは私に問うて来ます。
「どうする。です、神様」
「精霊王に魔法をどんどん使わせます。精霊は契約者のMPを使用しますからね……この調子でしたらすぐに底を突くでしょう」
「はい! です!」
スキル【短期顕現】の効果時間は……たしか十分くらいは持続します。発動にも契約者のMPが必要なので、大猿のMPはかなりピンチのはず。
と思いたいですね。
敵にMP関連の固有スキルがあれば終わりです。
そして。
わざわざ精霊王が契約している以上、MP系の固有スキルくらい持っていそうなのですよね。
それでも何もしないよりはよろしい。
「攻めますよ、アトリ」
こくり、と真剣な眼差しでアトリが頷きました。
どうせ即死させられるなら――とアトリが【狂化】を発動します。その影響で微かに微笑むアトリが、復帰してきたカラミティと改めて対峙しました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます