第205話 精霊王の試練
▽第二百六話 精霊王の試練
霧の立ちこめる森の中。
無数の精霊がアトリを囲んで浮遊しています。ふわふわした風船のような光がたくさん。カラフルな蛍のような姿も相まって、白髪の幼女を取り巻く環境は幻想的でした。
ちかちか、と精霊たちが点滅を繰り返します。
そのような中、アトリは頷いて大鎌を構えました。
「ロゥロ、破壊」
『がらああああああああ!』
言われずとも。
ロゥロは骨を操って木々をやたらめったらへし折っていきます。同時に無数の魔物も破壊していき、経験値をたんまりと獲得することができました。
「アトリ、魔物の群れです」
私が報告すると同時、整地された森の残骸から魔物たちが飛び出してきます。その魔物たちに精霊が群がりました。
おそらくは契約したのでしょう。
精霊が憑けばスキルが一気に増えます。ですが、さすがに付け焼き刃に恐れを成すほど、アトリという存在は脆弱ではありませんでした。
まあ……精霊を倒すのは不可能なので、ある意味では魔王よりも厄介です。
それでも精霊自体は最強でも、契約対象はしょせんは魔物。いくら第四フィールド産の強力な魔物であろうが、アトリにとっては恐れるに足らず。
「【奉納・瞬駆の舞】」
アトリは一瞬で魔物の群れの背後を取ります。別のアーツで隙を消し、踊るように敵地で暴れ回ります。
大鎌が振られる度に、敵の首が宙を舞います。
「【クリエイト・ダーク】」
私も黙っているわけではありません。
闇を操作して霧を生み出し、そこに【ダーク・ボール】を設置していきます。ただでさえ霧によって視界は悪い状態。
そこに闇やアトリ自身の【フラッシュ】も合わさり、敵はもはや為す術がありません。
動きを止めた途端、アトリの大鎌が一閃されます。
『ぎゃあああああああああ!』
辺り一帯は魔物たちの悲鳴で震えています。
アトリが放つ光属性の魔法が貫くわ、シヲが敵を拘束するわ、ロゥロが敵を粉砕したりするわの大蹂躙。
【ネロがレベルアップしました】
【ネロの闇魔法がレベルアップしました】
【ネロのクリエイト・ダークがレベルアップしました】
【ネロのダーク・オーラがレベルアップしました】
【ネロの再生がレベルアップしました】
【ネロの鑑定がレベルアップしました】
【ネロの敏捷強化がレベルアップしました】
【ネロの罠術がレベルアップしました】
【アトリがレベルアップしました】
【アトリの鎌術がレベルアップしました】
【アトリの月光鎌術がレベルアップしました】
【アトリの造園スキルがレベルアップしました】
【アトリの光魔法がレベルアップしました】
【アトリの閃光魔法がレベルアップしました】
【アトリの神楽がレベルアップしました】
【アトリの口寄せがレベルアップしました】
【アトリの詠唱延長がレベルアップしました】
【アトリの光属性超強化がレベルアップしました】
【シヲがレベルアップしました】
【シヲの擬態がレベルアップしました】
【シヲの奇襲がレベルアップしました】
【シヲの拘束がレベルアップしました】
【シヲの音波がレベルアップしました】
【シヲの鉄壁がレベルアップしました】
【シヲの触手強化がレベルアップしました】
【ロゥロのレベルがアップしました】
【ロゥロの攻撃上昇がレベルアップしました】
【ロゥロの破壊術がレベルアップしました】
【ロゥロの格闘術がレベルアップしました】
かなりレベルアップできましたね。
契約する対象が壊滅した精霊たちは黙り込んでいます。そもそも精霊は【顕現】がなければ意思の疎通が不可能となっております。
抗議するように、精霊たちは私に群がってチカチカします。
私も精霊ですけれど、精霊語は理解できません。困り果てていますと、突如としてガスタンクサイズの球体が出現しました。
思わず【鑑定】を放ちます。
おそらく「あえて」ソレは【鑑定】を一部だけ受け入れてくれました。
名前【ア】
レベル【110】種族【光精霊王】
なんと対象は精霊王。
しかもレベルが100を越えているということはカラミティークラスです。原則、精霊は契約対象なしに力を振るえません。
ゆえに恐れる必要はそこまでないはずですが、フィーエルクラスと単独で対峙するのは危険かもしれません。
やや緊張しますね。
「光。勇。望。闇。精。問。故」
「はあー、なるほど。何を言っているか解りませんね」
「神様に精霊ていどの言葉は届かない」
精霊王は言葉を発することが可能なようでした。
ですが、何を言いたいのかがいまいち伝わってきません。言葉に迷っているとシヲがアトリに耳打ちをします。
アトリは嫌そうな顔をしながらも、シヲからの耳打ちを受け入れました。
こくり、と頷きます。
「神様。精霊王がボクが何をしたいのか問うて来ている……です!」
「ここから出たい、と伝えてください」
「神は言っている」
アトリは精霊王に向け、大鎌を向けながら言い放ちます。
「ここから出たい」
「?」
精霊王が体をゆっくりと傾けました。
▽
ゆっくりと肉体を傾げた精霊王が光り輝きます。すわ戦闘開始か、と身構えた我々に対峙してきたのは黄金の頭髪を持つ青年でした。
美形ですけれど、顔は不気味なくらいに無表情。
能面を思わせる青年です。
「…………理解。した。闇精霊。ネロ。通行。許す。だが。精霊。試練。受ける。強くなる」
「なるほど。プレイヤー強化イベントですかね」
「…………精霊。力。化身。強き精霊。世界。強度。高くなる。魔。神。生。延びる。ネロ。資格。ある」
「そうですか」
どうやら精霊王の試練的なモノがあり、私はそれを受けることが可能なようですね。第四フィールドでは精霊の強化が可能なようです。
昨今、アトリに置いてけぼりにされている私としては吉報かもしれません。
問題はひとつ。
「神様は神。精霊の試練なんて不要」
「?」
アトリでした。
私を邪神だと信じ込んでいる彼女にとって、私が精霊の試練を受けたがる意味なんて解らないことでしょう。
まあ、アトリは全肯定タイプの狂信者に育成できました。
てきとーな嘘をでっちあげましょう。
「精霊の働きも神としてはチェックしたいです。ちょっと試練を受けてみましょうか」
「! 神様がお仕事をご視察なされる……ボクのお仕事も見てほしい。ですっ!」
私は精霊王の試練を受けることを決めました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます