第22章 新たな力編
第204話 精霊の森
▽第二百五話 精霊の森
第四フィールドに突入しました。
やはり新フィールドに最初に突入する、というのは楽しいですからね。是非とも体験しておきたいところです。
効率のお話をするのでしたら、我々が向かうべきは第一フィールドでしょう。
何故ならば第四フィールドボスは第一フィールドに居ますからね。一刻も早く最終フィールドを開放するのでしたら遊んでいる場合ではありません。
けれど、今回は第四フィールドを優先します。
まだ魔王に挑むのは早いですしね。
少なくともカンストはしておきたいところ。
ということでマリエラから出立し、数日をかけて第四フィールドに辿り着いたわけです。第四フィールドは巨大な森のようでした。
うっすらと森中に霧が漂っています。
視界は不良好。
とてとて前を歩くアトリは、振り返って言います。
「神様とおさんぽ……」
「お散歩ルートにしては魔物と罠が多いですね」
先頭を歩くシヲが罠を【音波】で発見。
触手で叩いて破壊してしまいます。発動した場所から天空に向かい、夥しい数の矢が放たれていきます。
近づいてくる魔物に、私は【プレゼント・パラライズ】を放ちます。
動けなくなった魔物に向け、アトリが【スナイプ・ライトニング】を連打。頭を貫通する光線……経験値が入ります。
わりと高レベルの敵です。
状態異常耐性がなければ、餌でしかありません。かなりの連戦ですけれど、アトリが強いので進んでいけます。
「しかし……森から抜けませんねえ」
「遠い。です。おさんぽたくさん! 嬉しい。ですっ!」
「それは良かったですけれど……【鑑定】」
スキル【鑑定】はレベルが上がればフィールドなどにも通用します。私はあまり【鑑定】のレベル上げをしていませんけれど、十分にフィールド【鑑定】は可能です。
レベルを上げていけば生息している魔物やフィールドの情報、ボス情報なども手に入るようですよ。
結果は。
「ほう。ここは精霊の森というようですよ」
「せいれい……いるですか?」
「居るのでしょう。野生の精霊ですね」
プレイヤー=精霊、ではありません。
この世界には元々精霊という生物がいるようです。野生の精霊とNPCは契約することが可能なようですけれど、結局、勝手にスキルを取得してくることは変わらぬようです。
「広さなどは解りませんね。アトリ」
私はアトリを呼んでから【クリエイト・ダーク】で足場を作っていきます。アトリはそれを駆け上っていき、上空から精霊の森を見回します。
そして首を傾げました。
追いついた私も同様です。
「おや」
精霊の森は広くありませんでした。
一時間も歩けば走破可能な広さです。だというのに、すでにアトリは何時間も森を彷徨っていました。
おそらくギミック。
我々が最初に突入してしまったので、この森の情報は乏しいです。時空凍結前ならば普通に行き来していたはずなので、誰かに問えば教えてもらえるでしょうけれど。
とりあえず、こういう時のための吉良さんです。
吉良さんは私と同じ世界最高峰の才能を持つ人物と言われています。空前絶後の考古学者と表されている彼は、ゲームの中でさえも才能を発揮しているようでした。
質問のチャットを打てば、即座に返信が帰ってきます。
便利なお人。
(笑)‥第四フィールドにそんな森はなかったと思うなー
ネロ‥実際にありますよ
(笑)‥多分、時空凍結の数百年間で出来た森なんだろうねー。そこは凍結の範囲外だったんだろうねー。エルフランドのカタコンベみたいなものさ
ネロ‥では、情報はないのですか?
(笑)‥おおよその予測はつくねー。その霧が迷いの正体さ
ネロ‥なるほど。大元を探してみます
(笑)‥歩いていても見つからないよー。困った時は破壊だ!
というやり取りを終えます。
ちなみに私が吉良さんに借りを作ることを厭わないのは、彼がそういう人だからです。教えるのが大好きという側面だけではなく、彼は私の質問さえも思考の材料にします。
『情報をくれたのでお礼をしたいのですが。いくらほどでしょう?』
『お金なんて要らないよー。少なくともロッキーならね』
『借りを作るのが嫌なだけです』
『そもそも借りなんてないさー。ロッキーが今回の情報を知らなかった。知りたがった。いま知った。吉良恵美から情報をもらおうとした……キミの質問からは無数の情報が得られたんだよー。キミクラスならば、こういう情報さえも重要さ』
とのことでした。
ゆえに、吉良さんには無駄な遠慮は不要です。そういう人ですからね。私たち以上に吉良さんは自分の才覚を振るうことに躊躇いません。
今のところ判明したのは「霧が何か悪さをしている」こと。
そして野生の精霊が生息していることです。
「アトリ、とりあえず森を壊していきましょうか」
「はい。神様! ロゥロ」
アトリが大量破壊兵器……妖怪がしゃどくろのロゥロを呼び出しました。ロゥロは黒塗りの目で周囲を睥睨したかと思えば、巨大な骨で森をへし折っていきます。
自然破壊が今――始まります。
森を破壊し続けて十分ほど。
我々の周りに大量の光が集まってきます。それは……精霊の群れでした。
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