第14章 ジョッジーノ・ファミリー編

第132話 邪神器の検証

   ▽第百話三十二話 邪神器の検証

 気絶によって強制ログアウトさせられました。

 正しく表現しますと「気絶できるレベルの痛みになった」ということです。今回の【魂痛】は激しすぎました。


 それを耐えて支援を続けた私って、ちょっと凄いのかもしれません。


 ともかく、今回は骨を折りませんでした。

 ただ首の筋を変にしてしまって激痛は続きます。何度か気絶と起床を繰り返した後、ようやく【魂痛】は治りました。


 運営は早く【魂痛】のバグをどうにかしてほしいところ。


 アトリには説明しているので、今日は大人しく過ごすことにしましょう。


       ▽

「かみさま!」

「久しぶりですね、アトリ。元気にしていましたか?」

「はいです、神様! かみさま……」


 相変わらずアトリの目はぐるぐるしています。

 私が気絶と起床を繰り返す日々の中、アトリは【黒の聖典ネロ・ビッビア】の検証をしてくれていたようです。


 邪神器【黒の聖典ネロ・ビッビア】の効果は「神器を作成する」ことです。が、そもそも装備するだけでステータスが上昇します。

 その補正はかなりのもの。

 他の神器に詳しくないですが、かなり強力な神器と言えるでしょう。


 現在、アトリは大鎌とセックを「神器化」してくれています。


 大鎌についてはヨヨ戦で使いました。

 問題はセックです。最悪の場合、神器化した対象を変更できないリスクも含め、あえてセックを神器にしてもらいました。


 結論としては杞憂です。


 いつでも「神器化」の対象は変更できるようです。大きな戦いの前には、セックから【テテの贄指】や衣服を神器化していくと良いでしょう。

 こちらの検証も続行中です。

 ちなみに発動条件は「装備をアトリの血で染める」ことでした。怖い。


 神器化したセックがやって来ます。

 なにやら神々しい雰囲気を纏っていますね。澄ました顔をしています。……ちょっと私が作ったコンセプトとズレていませんかね。その神々しさは美には余計かもしれません。

 服も着ていますしね。


 シヲが煩いのでしょうがないです。


 シヲは役に立っているので無駄に嫌われてやる必要もありません。装備をしていたほうが能力も上がりますしね。あと、シヲのジト目は辛いモノがあります。

 まるで私の悪いところをすべて映すかのような瞳なのです。


 メイド服を着たセックが優雅にお辞儀をします。


「マスター。神器化によってレベルが100に至りました。また、固有スキルもいずれは取得できるかと思います。またワタクシが完璧になってしまいました」

「元々が完璧なら、それ以上はないのでは?」

「……」


 完璧な無言です。

 私はセックのコンセプト上、もっとも気になることを尋ねました。


「カンストは凄いですね。【お手伝い】はどうなります?」

「スキルレベル100で再現されます」


 やはりチートです。

 もう私が【錬金術】を使うよりも、セックが作ったほうが良いモノができるわけですね。セックは自慢げに胸を張っております。


「ワタクシは完璧ですので」

「セック、ゴーレムコアの調達はどうでしたか?」

「そちらも完璧です。ワタクシがメイドを引き連れ、すでに五個の低級ゴーレムコアを入手しました。また、中級はオークションでひとつ購入いたしました」

「よろしいでしょう」


 あとでゴーレムのひな形を作りましょう。

 完成させるのはセックに任せたほうが良いでしょうね。個人的には中級ゴーレムで戦闘系のスキルを雑に搭載してみたいです。セックが【お手伝い】で借りる用のパーツにしたいところ。


「スキル枠が増えたのですよね? 何かほしいスキルはありますか?」

「【属性強化】と【詠唱延長】などの魔法系スキルがほしいです」

「解りました」


 セックは生産特化のスキル構成です。

 ですが、召喚を主軸とした戦闘も可能な構成となっています。せっかく神器になったのですから、もっと戦闘系のスキルがあっても良いでしょう。


「マスター。世界樹の植え替えについても順調です。こちらの【理想のアトリエ】へは数日中に移動可能となっております」


 シヲから【土魔法】、アトリから【造園】をコピーして、セックは【理想のアトリエ】に世界樹を連れてくるプロジェクトに従事しています。

 わざわざマリエラの拠点まで行くのは面倒ですからね。


       ▽

 次はアトリの邪神器【死に至る闇】についてです。


邪神器【死に至る闇】 レア度【ジェネシス】

 レベル【81】 ライフストック1500

 攻撃【405】 魔法攻撃【405】

 耐久【405】 敏捷【405】

 幸運【405】

 スキル【魂喰らい】【ヴァナルガンド】【レベル成長】【混沌属性付与】


 これですね。

 まず検証として【魂喰らい】のライフストックが爆増していました。さすがにヨヨには遠く及びませんし、ステータス増加バフなどは使えません。

 ですが、かなり戦闘の自由度が広がりました。


 今までの【死神の鎌ネロ・ラグナロク】の火力で良ければ、三発は撃つことが可能でしょう。

 まあ、今まで通り全力でぶっ放すのなら一回だけですが。

 そこまでの火力が必要な敵でない限りはオーバーパワーでしょう。


 次に確認したのは【混沌属性付与】でした。

 これは発動すれば、鎌に【光属性】と【闇属性】が付与されるようです。単純に斬撃の威力が増えます。


 また、何発も命中させることによって【混沌】の状態異常を付与できます。

 状態異常【混沌】の効果は「参照パラメーターのランダム変更」です。すなわち、魔法を撃った際などに参照されるパラメーターが耐久や運になったりするわけですね。

 場合によっては敵を強化してしまいそうです。


 幸か不幸か、かなり命中せねば発動しません。


 安定性が崩れるのでなるべく発動してほしくない状態異常ですね。まあ、上手くいけば敵に何もさせない状態異常でもあります。

 たとえばロゥロなんて攻撃力しかないので、食らってしまえばすべてが終わります。


 まあ、ロゥロの耐久なら状態異常になる前に消えているでしょうけれど。


 次に見ていくのは【ヴァナルガンド】でした。

 これはまだ検証が不十分です。今のところ、発動するだけでは問題はないようです。しかしながら、その状況で動けば動くほどに肉体に負荷がかかり、戦闘不能になった際には全バフが解除されてしまうようです。


 ちょっと動くくらいなら問題はありません。


 効果は「ステータスの大幅な強化」ですが、同時に「光属性の炎」を自在に操る能力もあるようです。後者のほうは練習が必要とのこと。

 もっと使い込むべきスキルのようですね。


 などなど、強化点は盛りだくさんです。

 まだ固有スキル【勇者】の検証なども残っています。ですが、これに関してはまったく不明となっております。

 名前的にとても強そうなのですけどね。


 今回のアトリの成長はこのような感じでしょうか。


「あ、そういえば忘れていました。ヨヨからピアスを盗んだんですよね」


 ヨヨの死後、私は彼の装備を奪いました。

 いえ、あまりに人聞きが悪い。これはドロップでした。真祖吸血鬼からドロップしたのは「回復禁止耐性」のピアスでした。


 アトリには必須です。

 だいぶ強化されてしまいましたね、アトリ。一方の私は【神威顕現】の副作用でレベルダウン……いずれアトリに捨てられたりしませんよね?


 戦々恐々とさせていただきます。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る