68:幻覚魔法の使い手
空中の巨大ディスプレイを確認しながら敵の本陣に辿り着いた。
しかしそこには誰もおらず……
「あれ、何処に行ってしまったんでしょうか?」
リンが困ったように周囲を見渡した。
レイジ君はディスプレイを見上げてこう言った。
「……ディスプレイには敵の姿が映ってますね。どういうことなんだろう?」
見えない敵の姿に困惑する俺たち。
しかし次の瞬間、アーシャがバッと後方に飛んだ。
その直後、アーシャのいた場所の地面がドゴンと爆ぜる。
「一体なにが……?」
ユイの困惑する言葉。
俺たちは一斉に警戒して周囲を見渡すが、敵の姿は何処にも見えなかった。
「遠方からでしょうか?」
「……違うと思うわ。遠くから飛んできたのなら、もっと早く反応できたもの」
リンの言葉にアーシャはそう返す。
アキハは痺れを切らして両手を上げた。
「くそっー! そんな隠れてばかりいないで出てきなってばー!」
もちろん、そんな簡単な煽りで、のこのこと姿を現す相手でもないだろう。
俺はコッソリと【神話の書・出典:魔術反射】を使っておく。
瞬間、俺に向かって何らかの魔術スキルが飛んでくるのが分かった。
俺はわざとそれを受け、反射させる。
反射した魔術の炎を目で追うと、ほんの十数メートルの場所に飛んでいった。
「ちぃっ!」
舌打ちが聞こえるとともに、仮面の男が姿を現す。
「……なるほど、姿を隠すスキルを使っていたみたいね」
アーシャは納得したように頷いた。
とりあえず一人、正体を現した。
アーシャが双銃を抜き、瞬く間にその仮面の男を撃ち抜いた。
「耐久力は微妙な感じかしら。これなら姿を見えるように出来れば倒せそうだけど……」
でも、どのタイミングで魔術スキルが飛んでくるかも分からない。
常に気を張っているのも精神的に疲れてしまうだろう。
一人落とし、手札は分かったものの、いまだ相手にペースを握られたままだった。
「さて、どうしますか」
ユイが悩むように眉を寄せて言った。
何とかしてこちらのペースに引きずり込みたいものの、なかなかいい案が思い浮かばない。
しかし相手も俺の魔術反射を警戒して、安易に攻撃を打ってこなくなっていた。
完全に膠着状態となる。
――《ミステリー・アンノウン》は幻覚魔術なのかな?
――おそらくそうだろうな。はてさて、《ハードボイルド・フロンティア》はどうするのか。
――流石は決勝戦、いきなり面白い試合展開だ。
――予選では一度も判明しなかった《ミステリー・アンノウン》の謎がようやく分かったな。
そんな中、ようやく試合展開に動きが出始めてきた。
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