67:決勝戦、開始!

「それでは、決勝トーナメント第一試合、ランキング第一位のトオル率いる《ハードボイルド・フロンティア》VS謎の仮面集団ミステリー・アンノウンの戦いを開始します!」


 ゴォン、ゴォンと鐘の音がロンドン迷宮の第43層に響き渡った。

 試合が開始される。

 頭上の巨大なディスプレイにはコメントがたくさん流れていた。


――うぉおおおおおおおおおおおおおおおぉおおお!

――トオル頑張れぇええええええええぇえええええ!

――クソ楽しみ!

――アキハちゃん、可愛いよー!

――俺はリン派だな、リンしか勝たん。

――何言ってるんだ、強くて美人なアーシャに決まってるだろ。

――俺は大人で頭脳明晰なユイが一番良いと思います。

——おまいら、試合見ろよ……。


 コメント欄もかなりの盛り上がりを見せている。

 話が脱線している気もしないでもないが。

 それにしても、相手の正体が分からないから、応援が全部俺たちに向いている気がするな。

 今回の相手は全くの謎に包まれている。

 しかしその強さは折り紙付きで、予選でも圧倒的な力で相手をねじ伏せていた。

《ミステリー・アンノウン》はかなりテクニカルな戦い方が得意っぽく、予選では相手は手も足も出せずに気がついたら負けている、と言った感じだった。

 どんなスキルを使っているのか。

 何故、相手は負けたのか。

 予選の配信を見ていただけでは全く把握できなかった。

 分かるのは、不自然なタイミングで相手の動きが急速に鈍る、ということくらいか。


「相手の手札が読めない以上、相手のペースに飲まれるのは不味いと思います。なので、こちらから先手を打ちたいところですね」


 試合開始と同時に、ユイが言った。

 相手の位置は配信画面に筒抜けになっている。

 先手を打つのは難しくない。


 敵の位置が分かるので、分かれて行動する意味もない。

 俺たちは足並みを揃えて敵のいる位置に向かった。


 頭上の巨大ディスプレイで敵の位置を確認しながら移動する。

 どうやら相手は待ち構えるつもりみたいで、一切初期位置から動いていなかった。


「確実にこちらから攻めにいくことを読まれてますね」


 リンがそう言う。

 それにアキハが力こぶを作って答える。


「そんな読みさえ蹴散らして倒してしまえばいいんですよ! 私たちなら出来ます」

「よく言ったわ、アキハ。何せ、私とトオルがいるわけだし、問題ないわ」


 アキハの言葉にアーシャがそう返す。

 ユイは黙って考え込んでいて、レイジ君は、


「……本当に大丈夫でしょうか?」


 その中で一人だけ心配そうにしていた。

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