66:そして決勝へ

 俺はマッチョたちからの怒濤の攻撃を《達人の書・出典:瞬間伝達》を使い避けながら攻撃の隙を窺っていた。

 俺の武器が大剣ということもあり、小回りが利かず、絶え間ない攻撃に自分の攻撃を差し込むことが出来ないでいた。


 しかし。

 おそらく後衛の二人からの攻撃が飛んでくるとき、前衛の攻撃が一瞬止むはずだ。

 そのときが反撃のチャンスだと思っていた。


 そして、その瞬間は訪れる。


「行くぜ! 《達人の書・出典:メテオ・ショット》!」


 後衛のその言葉とともにスキルが発動される。

 メテオ・ショットは炎の弾丸をもの凄い速度で撃ち出し、相手を確実に射貫くスキルだ。

 俺はこのときを待っていた。


「《神話の書・出典:魔術反射》」

「……なっ!?」


 俺の使ったスキルを聞いたマッチョたちはしまったと言った感じの表情を浮かべる。

 そう。

 これを使えば相手の魔法スキルを反射することが出来るのだ。

 俺に直撃したメテオ・ショットは急反転して、放ってきたマッチョに襲いかかる。


「く、くそがッ!」


 自分の攻撃を受け、ダンジョン外に転移されたみたいだ。

 これで残るは五人。

 瞬間、パンッという乾いた音とともに、目の前のマッチョがまた一人転移していった。


「お待たせ。でも、私の助太刀はいらなかったかしら?」


 どうやらアーシャが来たみたいだ。

 俺は目の前のマッチョたちから目を離さず答える。


「いや、助かったよ。これでもっと早く終わりそうだ」


 一気に二人落とされて慌てているマッチョたちに俺は《達人の書・出典:瞬間伝達》を使って背後を取って、もう一人落とす。

 それと同時にアーシャも一人落としていた。


「これで残り二人か」

「すぐに終わりそうね」


 俺たちの言葉にマッチョは狼狽えたように叫んだ。


「く、くそッ! こんな早く助けが来るなんて聞いてないぞ!」

「それは貴方たちの目算が甘かっただけだと思うわ」


 それからはトントン拍子で二人を落とし、試合終了となった。

 遅れてやってきたレイジ君とリンは試合が終わっていることに気がついてこう言った。


「僕たちいらなかったみたいですね」

「そうですね。やっぱりトオルさんとアーシャさんが強すぎてやることなかったです」


 そんな話をしつつ控え室に戻ると、既にアキハも戻ってきていた。


「おめでとうございます! みんなならちゃんと勝ってくれるって信じてました!」


 それから俺たちは順調にDブロックの予選を通過していき、思ったよりあっさり決勝トーナメントまで到達してしまうのだった。

 決勝トーナメントにはレイジ君の父、レイ率いる《黄金破滅群》も上がってきている。

 おそらく直接対決となるだろう。

 それに、決勝トーナメントからは配信の画面がステージ上方に設置され、逐一コメントや相手の動向が把握できるようになっているらしい。

 それがどのような結果をもたらすのか、いまいち予測できないが、俺たちはそれに備えて作戦を夜まで練るのだった。

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