第22話 詳細発表
「え!? ほんとに!?」
そろそろかなとは思ってはいたものの、やはり物事が動くの突然のようだ。
仕事から帰ってくる間はスマホに目を通すことはあまりない。そもそも通勤時間事態もそこまで長くは無いし、電車の中でもコーチングのことや今後の行方などを考えていればすぐに駅に着いてしまう。
「今チャットにURL貼りましたよ」
「あ、ありがとっ」
ひまりさんから送られてきたチャットのURLを踏んで公式サイトへいくと、そこにはデカデカと「第一回Japancup」の文字が映し出されていた。
「おお~。ほんとだ」
その文字を見てようやく実感が湧いてきた。これからが本当の闘いの始まりなのだと。
「ついにだね」
「しかも、今から登録可能で一か月後に予選開始って。なかなか急ですよね」
その突貫工事さを感じさせるところに不安さを覚える。それよりも、やっぱりというか当然のことながら女子リーグと言うものは存在しなかったようだ。最近別ゲーで女子リーグを発足したことでだいぶ新規参入も増え界隈が活性化したニュースを見たから、もしかしたらと思っていたがそこまで甘くはなかったようだ。
「Japancupってことは日本だけ?」
「そうだよ」
「世界大会にはいけないのか」
このゲームの製作会社は海外の会社のため、日本大会のみということは各国でとりあえず国内大会だけやってそれの盛り上がりを見て、オフラインでの世界大会を開催するということだろうか?
なんというか、そこに関しては少し拍子抜けしてしまった。この会社はプロシーンがあるゲームではないものの、他にもヒットしているゲームを出しているし、今のFPS業界を代表すると言っても過言ではないにも関わらずずいぶんと消極的な様子だ。
今他ゲーで物凄い数字も取れていて盛り上がっているゲームは無い。どれもが横並びの状態だから、ここで話題をかっさらうことができれば違うゲームのプロの意向なども十分に考えられるだろう。
そう考えるとやはりEsportsと言うものは採算が取れずに、興行として成り立つものにはなりえないのだろうか。
「え!? どういうこと!?」
下まで読み進めていくと、目を疑うようなことが書かれていたため柄にもなく動揺とともに大声を出してしまった。それは先ほどまでの俺の所感を180度ひっくり返すものであった。
「どうしたんですか?」
「3人ともこれよく読んだ?」
「いや、大会開かれるよってところぐらいまでしか……」
代表してひまりさんが答えるが、選手たちは大会が開かれることによる意気込みを話し合っていただけで、その他のことはあまり気にしていなかったようだ。
初めから感じていたことではあるが、彼女達は今の若者、特にこうやってネットに出てきているにも関わらず有名になってチヤホヤされたいという願望がかなり薄い。純粋にゲームが好きで、その好きなもので勝ちたいという気持ちがほぼであった。そのため、人気を取ろうとしたSNSの運用もしてないし配信も少ない。
唯一トモさんだけが他の2人よりも頑張っている様子は見れるが、それでも周りから比べればまだまだだろ。オーナーから聞いた話だが、もともとあまり配信などを好んではいないようだが、チームのために頑張る努力をしているとのことだ。
そう考えると仕方がないようにも感じられる。
「大会概要及びルールのところよく読んで!」
「え? え~とっ」
俺の言葉に反応してトモさんが代表してその文言を口に出して読もうとする。
「今大会は予選、本選、決勝ともにリーグ方式を採用しており参加数により予選数が決まります。なお本選出場8チームには公式プロとして資格を与え資金援助及び定期てきなリーグ戦に出場権利を有する」
「そういうこと」
あまりにもさらっと書いており、ほとんどの人が前半の大会の進行などで読むのを止めて見落としている人も少なくはないだろう。
「「「……え???」」」
「これってつまり……どういうこと?」
たしかに、こんな条件が出されるとは思ってもいなければ、ここに書いてあることを瞬時に理解するのは難しいかもしれない。
「えーとね。トモちゃん。つまり本選に行くとプロチーム所属のプロゲーマーじゃなくて・・・のプロゲーマーになれるってこと」
「さらにリーグ戦にも参加できるから、今後あるだろう世界大会に出るためには、まずそこを目指す必要性があるってこと」
「えええええ!!! めっちゃ重要じゃん!」
「さらにいえば、チーム以外からも給料が出るってこと」
「えええ!!!」
これがどれほど大きなことかを、様々なゲームの競技シーンを見てきた人なら良く分かるだろう。大体のゲームはカジュアル層を大事にしてプロシーンはおざなりになっていることが多い。それは、同じゲームをやっているからと言って、必ずしもプロを手本にするとは限らないし、そもそも有名になれなければ見つけてもらえる可能性も低い。他にも配信者など一般的に見れば上手く見えるプレイヤーが多ければ多いだけ、そちらに人が流れるのは必然だ。
初回からここまでプロに価値を見出してくれているということは、運営は本気でこのゲームで競技シーンの覇権を取ろうとしている表しである。競技者自体が増えれば自ずとコンテンツも盛り上がるのは必然だろう。
「これは、今スクリムに参加しているチーム以外にも大会に出てくるチームは増えそうだね」
自ずとレベルは上がりそうだし、今の俺のような選手以外の裏方も一気にこっちに流れ込んできそうだ。そうなると、俺の今のレベルでは選手たちの実力以外にもコーチとしての実力でも差をつけられてしまう。
「凄いやる気でてきた」
「改めて頑張らないとだね」
選手たちのやる気をアップさせるいい機会にはなったものの、俺自身は胸が締め付けられる思いだ。
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