第16話 プロゲーマーの食生活
「よっしゃ。もう少しやるかな」
その後少し反省会をして今日の練習は終わりになった。2人のおかげで俺のモチベーション上がり、解散後俺は1人で研究に入ることにした。
そうは言ってもそれは名ばかりで、純粋にゲームがしたいだけであった。
「久々に朝までやるかぁ!?」
時刻は深夜の1時30分を回ろうとしていた。
明日は取らなければいけない有給消化休みなので、特に早起きをする必要はない。どんなに夜ふかしをしようとゆっくり気のいくままに寝ていられる。
「あの子たちも昼は学校だろうから、俺は1人で自分のやるべきことをやりますか」
全員がプロ一本のチームならば寝て起きたらずっとチーム練習というところも珍しくはない。しかし学業と両立しなければならない学生はそうも言っていられないのが現実である。
体を動かすようなスポーツとは違い練習量がものを言う世界であるEsportsではあるが、だからといってそれが丸々ハンデになるわけではない。いくら量をこなしたとしても何も考えていなければ意味は無い。
今回の件で練習の意味を考えるきっかけになったから、あとは随時気づきを俺が与えられればいいことだ。今はまだ公式大会の詳細な日程と内容が出ていないから力を蓄える時期だが、大会が始まってからが俺の本当の仕事が始まる。
情報収集から作戦立案などを予選で当たる4チーム分やらなければならない。それが始まったらとてもではないが俺がゲームをする時間など取れないため、今のうちにこのゲームの理解度を高めることに専念しなければ。
「まあ、ソロでやるのとパーティーじゃあまた色々違うから何とも言えないんだけどな」
そんなことを考えながら、一度椅子から立ち上がり後ろの廊下にある冷蔵庫へ向かう。買い置きのカロリーメイトとコーヒーを取りだし、もう一度デスクに戻る。これがいつもの長時間ゲームのお供であるとともに、深夜の至福の神器である。
もっとフル稼働の時はここにスーパーの得用チョコレートが付くのだが、それは本当に頭が糖分を必要としている時にだけ使用するようにしている。普段から選手していると脳がそれに慣れてしまうため、いざと言う時に効きが悪くなってしまうからだ。集中力を高めるために、大会などの時にブドウ糖を摂取するEsports選手も多いくらいには糖分は勝利に必要なものになっている。
「仕事辞めたいとか思っていても、もし本当に辞めらたもっとひもじい思いをするんだろうな」
俺はそんなことを思いながら大きくため息をつく。
ゲームが好きでEsportsの業界にいたくて、こんな俺でも微力ながらも手助けができればと思っている。しかし、チームの裏方に回るといっても俺には求められるような運営技術も動画技術や撮影能力もない。できるとすればマネージャーくらいだろうが、人とのコミュニケーションが得意なわけでもない。
そうなってしまえば、競技にかかわり続けるしか方法は無かったのだ。今は転職の時代だなんていっても、今の仕事が次に活きるような人ばかりではない。だからと言って同じ業界でステップアップし続けるなんてことも不可能に近い。
だったら大人しく、この二束の草鞋を大変ながらも続けていくしかないのだ。
「ただ、本当はもっとちゃんとした食事をした方がいいんだろうけどな」
小腹が空いてきたため、自分の腹をなでる。
全てはゲームを長時間やるための食生活なので、味とか食材は度外視している。そのため行きついたのが、カロリーメイトと今は切らしているが完全栄養食パンであった。生憎料理スキルはゼロのため、自炊で節約などできないしそもそもそんなことをしている時間がない。だからといって、毎回外で食べたり買ってきたりなどできないためにこういった食生活にいきついたのだ。
「でも、これで十分だからな」
カロリーメイトの封を開け一つ取り出しそれを口に運ぶ。
しばらく入力操作がなかったために、ログアウトしていたゲームを起動し直してロビー画面に戻る。
「さあて、どうしよっかなー。ランクするか、研究するか」
気持ち的には自分でプレーをしたいためランクに行きたいが、今日はもうスクリムでプレーして気になった点などを確認していきたい気持ちもある。
「まあ、最初は研究をして、疲れてきたらランクに行きますか」
それから、1人でマップお散歩モードという競技者以外は滅多に使わないであろうマッチに入る。今はまだ一つのマップしかない為いかにこのマップを攻略していくかが勝利の手掛かりになる。
スクリムは行われているものの、公式大会はまだ開かれていないので各チームがどんな戦法を用意してきているかは未知の状態だ。そういった作戦なんかが露見していくことによって、どんどん競技者のみならず一般プレイヤーの実力も上がっていきそれが、ゲーム自体の盛り上がりに貢献されていく。
作戦を重要視するゲームだと配信を拒む選手の方が大多数だが、このチームの3人はその辺をどう思っているのだろうか。ここは後で確認しなければと思っていが、オーナーとの約束の1つであるチームを有名にするという項目のクリアには間違いなく、3人の人気度がかかっている。
そんな、これからのことを考えながら俺はゲームを続けた。
ふと時計を見るとすでに朝の7時を回っていた。
「あれ? もうこんな時間か」
熱中しているあまり眠気を忘れていたようだ。
「ふぁぁぁ~~~」
昨日帰ってきてからだから12時間くらいは経過していたことを考えたら途端に眠気が襲ってきた。大きく伸びをしながら長いあくびをする。
休みの日だからと言っても特にやることは無いが、たった1つだけミッションがあるのでそれだけは完遂しなければならない。
「いったん寝るか。それとも帰ってきてから寝るかどうしようかな」
ここで寝たら恐らく夕方まで起きないだろう。そうなると夜に外出するのも絶対に面倒に感じるはず。
「よし、シャワー浴びて時間まで待とうか」
ゲームをいったん閉じてホーム画面に戻る。椅子から立ち上がり風呂場へ向かう。脱いだ下着は洗濯機へ突っ込み洗濯して、部屋着はそのままで熱いシャワーを浴びた。
これにより、へばりついたような眠気は消え去り、よどんでいた脳内は綺麗さっぱりスッキリとした。徹夜明けのこれもまた至福の瞬間である。本当であれば、このままベットへだいぶしたいところではあるが、もう少し起きていなければいけない為ゲームを続行することにする。
冷蔵庫に入れてある水を取りだし、その場で半分ほど一気飲みする。空っぽの腹の中に喉と胸を通って冷たい水が流れていくのがよくわかる。
「ふぅ~」
キャップを締めて再びデスクに戻ると。
「ん?」
時刻は8時になろうとしている所であった。
T>O<M:おい。こんな時間までゲームやってるなんてお前ニートかよ
トモさんからチャットが飛んできていた。
「なんともずいぶんと攻撃的だな」
彼女がこんなに時間にパソコンを開いていることに少し引っかかったものの、昨日あんな別れ方をた後にも関わらずこうやってコンタクトをとってきてくれたことに嬉しさを感じた。
ハク:今日は平日休みだよ。社会人には色んな働き方があるんだ
文字を送信してから文面を見ると少し怖そうに感じるかな?
結構言われることだが、大人が平日仕事をしていないと無職と思われがちな、あれはいったい何だろうか? サービス業の人間なんてむしろ土日は休めなくて当たり前だろうに。
T>O<M:ちょっとサーバー来いよ
「ん~?」
まさか、思わぬ人からお誘いをいただいてしまった。
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