第10話 チームの所感

 一昨日がほぼ徹夜状態であったため、昨日は早めに寝ることにした。そうはいっても時計の短い針は数字の3を指していたため寝ていた時間は4時間ほどだろうか。それでも、体の疲れはとれるし頭はスッキリする。


「ショートスリーパーがその才能だけでどれほど周りと差がつけられるかよくわかるな」


 シャツに腕を通しながらそんなことを思う。やりたいことはいっぱいある。しなければいけないことも。ただ圧倒的に時間が足りなさすぎることを痛感する。普通の人の倍は働いていると考えればそれも当然なのだが、食事をとっているにも関わらずなぜ睡眠というエネルギー摂取までしなければいけないのかと、動物としての構造に疑問を覚えながら、キッチンの棚に置いてあるカロリーメイトを手に取り家を出た。

 口の中が乾燥する、ボソボソ触感のそれを美味しいと感じることはもうなかった。もう少し、腹も膨れ栄養もとれ美味しいと感じる食べ物があればいいのだが、値段との相談もあるとなかなか手が出ないことが多い。

 寝起きの脳みそでそんなくだらないことを考えていると、徐々に覚醒してきていることを感じてきた。それに伴い、俺は本来考えるべきである少女たちのことが頭に思い浮かぶ。


「あの子達って仲がいいのかな?」


 昨日初めて彼女たちの練習を見ていて、感じた違和感がようやく言葉になった。

 それは、単純にコミュニケーションの薄さであった。それぞれが自分の好きなことをやって負けている印象で、連携の報告といってもただ声を張り上げている。そんな感覚だった。


「強くなりたいとか、勝ちたいとかはあるんだろうけどな」


 俺が果たして彼女らに受け入れられているかは分からない。いや、受け入れてもらえてはいないだろう。まだ、使える人間かを推し量られているそんな段階だ。まあ、若干一名は完全に毛嫌いしているようだが。

 個人の実力は離れているものの、総合的には高い。しかし、だからといって勝てるほど簡単なことではない。チームメンバーがばらばらの状態では絶対に勝てないことを誰よりもい身に染みて知っているのが俺だからだ。

 プロの世界では誰しもがやる気に満ち溢れていて、勝利に貪欲でそのためにはどんな努力も惜しまない。

 そんな世界は幻想であると知った時は俺も驚いた。

 他のスポーツでも言えることかもしれないが、Esportsの世界は元がゲーム好きと言うところからきているためそれが顕著なような気もする。それに業界全体がまだ若く、他のものに目移りする年頃でもあるし、実際にプロを経験したきちんとした大人が少ないことも影響していると思う。


「どういった経緯でチームが組まれたのか知りたいところだな」


 それを知った所で劇的に何かが変わるわけではないが、この際だやれることはやっておこうと思う。オーナーもなにかあればいつでも声をかけてくれって言っていたことだし、快く受け入れてくれるに違いない。

 俺はそう考えるとすぐに、ポッケからスマホを取り出しチャットでオーナーに相談の旨を伝えた。

 すると。


 オーナー:了承です。いつでもいいですよ


「返信はっや!」


 俺が送信してから一分も満たないうちに帰ってきた。


「この人ずっとパソコンの前に座っているわけじゃないだろうな?」


 まさに俺が思っていたショートスリーパーがここにいるとしたら、その極意を教えてほしいところではある。それは今俺が何よりも欲している助言だからだ。





















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