大蛇

南之悠

第1話 帰郷

 父が亡くなって数年が経ち初めて父が幼少期を過ごした故郷の島根県へと帰る事になった。

祖父も父と共に東京へ越して来た為、四十年以上誰も住んでいない実家は見るも無残なほど荒れ果てていた。

祖父はその昔教職に就きながら神主も担っていたと言う。

 崩れた母屋を見ながら山を登っていくと綺麗に手入れされた社が見えてきた。

竹藪の中に立つ社は現代の風景とは違う美しさをしていた。

 社へと近づくと一人の青年が腰掛けていた。

着物に羽織を羽織った青年の姿は大正時代にタイムスリップしたかと思うほどだった。

七月も過ぎた暑さが本格的になる時期でも涼しげな青年は私の存在に気付き手を上げる。

初めて訪れた故郷で知り合いが居るはずもなく私は少し怪訝な顔をしながら近づいて行く。

「久しぶりだね。清六セイロク何年振りだろう。」

 青年は祖父の名前で私の事を呼ぶのだった。

「清六は祖父の名前なんですが祖父の知り合いの方でしょうか。」

 青年はハッとした表情をした後、少し悲しそうな顔をした。

「そうか。もうそんなに時間が経ってしまったんだね。」

 青年は空を見上げ、目を閉じる。

「昔、清六と大蛇を退治しに行ったんだ。」



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大蛇 南之悠 @minamino_u

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