302 集中して一気にぶち抜く!

 そこに分身から連絡が来た!


【本体、マズイ。間引き組の三人大怪我。スタンピードが起こりかけてるのか、魔物が多過ぎで治してる暇がねぇ】


『すぐ行く。持ち堪えろ。…ガーコバタ、緊急事態。後は任せた』


 アルは念話通話で返し、すぐにガンザルダンジョンの転移魔法陣まで転移して、転移魔法陣を使ってブルクシード王国サルタナダンジョンに移動し、そこから分身を目指して転移した。

 【チェンジ】でフル装備にする。

 武器は合金刀だ。魔力はかなり節約出来た。先見の明があるのかも…いや、想定内か。魔力の流れが不安定だったのだから。


 転移した場所はサルタナの北西、フレールダンジョン8階。鑑定様が教えてくれた。

 こんなに浅層にあふれて来るのはかなりマズイ。


 しかも、半分ぐらいはドロップに変わらず、そのままで実体を持ってしまっているので、足場がなくなるし、視界も悪くなる。

 地下に潜って行くタイプの洞窟型フロア、さほど広くない通路、小部屋、階段だ。


 アルは分身と共に魔物を殲滅しながら、間引き組及び冒険者たちは取りあえず眠らせて安全な影収納に入れておく。外に出すのは後だ。

 狂乱状態の魔物と魔物の死体と人が邪魔で、魔力も濃厚過ぎて怪我人の気配も上手く掴めないし、位置が分かっても中々近寄れなかったが、魔物の死体を片っ端から影収納に収納し、通路も小部屋の壁も壊してやっと通れた。

 人間を入れた影収納と魔物を入れた影収納とは当然別だ。影収納の場合、かなりの数を別々に作れるのである。


 分身が大怪我の三人を包む結界を張ってくれていたおかげで、踏み潰されるようなことはなかったが、内臓と頭の方がヤバイ。

 もう少し広く結界を張り直した後、アルは手足が足りてない人は血止めだけして、内蔵と頭に直接エリクサーを転移させ、回復魔法もかけて早急に回復を促す。

 頭をやられていた人は記憶が飛んでるかもしれないが、位置からして多分、機能障害はないだろう。


 手足も潰されてはいたが、このぐらいなら繋げられるので治して繋げてやった。

 一本足が足りない人がいるが、見当たらないので仕方ない。

 治療後の怪我人も念のため【スリープ】をかけて影収納に入れておく。


『分身、治療完了だ。フロアの床をぶち抜くから、他の冒険者の回収よろしく』


 影収納ぐらいならそう魔力を使わない。


【了解】


 スタンピードを早急に止めるには、ダンジョンボスを倒してダンジョンマスターになることだ。


 アルは古竜刀に装備を変更し、集中して一気にフロアの床をぶち抜く!

 一昨日のようにくり抜くより速く、二十層以上をぶち抜いた。

 フレールダンジョンは何階までだっけな?と思いながら、ぶち抜いて行くと最下層は80階だった。


 …うん、かなり深い穴が掘れてしまったが、事故なので仕方ない。


 ダンジョンボスのグレーターデーモン(上位魔将)は半分ふっ飛ばされていたが、まだ死んでなかったのでみじん切りにしておいた。


 …そのままでドロップに変わらない。

 これはスタンピードになりかけだったからか、ダンジョンエラーだからか。


 放って置いてコアルームの壁を切り抜くと、やはり、台座しかない殺風景な部屋だった。

 念のため、罠がないか確かめてから、アルは台座に載ってるコアに触れる。


【助けて下さい!ダンジョンマスターになって助けて下さい!スタンピードになってしまってて…】


 コア自身が取り乱していた。


「はいはい、落ち着け。ダンジョンマスター登録するから」


 アルが魔力を流すとすんなりとダンジョンマスターに登録された。

 更に魔力を流して狂乱する魔物たちを消す。

 魔力が濃くなり過ぎて半数程は実体を持ってしまっていた。狂乱した魔物はもう元に戻らないし、コアでもコントロールが出来ない。


 ついでに、ダンジョン内にまだいる冒険者たち兵士たちは、強制的にダンジョンの外へ転移させた。分身もだ。

 それから、出入り口を閉鎖して、階数を減らして50階までに作り変える。

 さすがに魔力が厳しくなったので、コアたちの魔力が込められているオーブを使った。

 魔力の流れも調整してから、コアとバトンタッチ。


【助かりました、有難うございます】


 フレールダンジョンのダンジョンコアは、心底ホッとしたかのように礼を言う。

 スタンピードは能力が制限されているコアにはどうしようもないので、もどかしかったのだろう。


「どういたしまして。お前は『フーコ』な。魔力が安定してからじゃねぇと魔物も作れねぇだろ。しばらく休め」


 新米コア用資料書類と通信バングルを渡すと、アルは外に影転移した。



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