080 後を追いかけて来られる方が怖くね?
アルはさっさと冒険者ギルドを出て、アリョーシャダンジョンに向かった。
急いだ方がいいかも、と物陰から1階の人気のない所に転移し、そこから走って行く。
1階で見てない、というのも不自然になるので。
探知魔法の範囲も精度も上がっており、3階ぐらいまでは探知出来、ウラルの気配はその3階にいた。
この階層の代表魔物は洞窟フロアなのにフォレストドッグ、腕程の太さがあるワイルドスネーク、鱗を重ねたようなスケイルアルマジロだ。
「危ないっ!よけて!」
アルが近くまで行くと、ウラルが鋭く注意を促す声が聞こえた。
しかし、女の子は反応出来ず、ウラルは手を引っ張って自分の身体で庇う。
相手の魔物はこの階層では素早い方のフォレストドッグだ。
護衛の騎士たちは二人は、ワイルドスネークを相手にしている所だった。人を相手にする騎士なので、魔物の対応にはあまり慣れてないのだろう。
アルは一気に距離を詰め、フォレストドッグの首根っこを掴み、ワイルドスネークの尻尾を踏み付けた。
「ほら、ウラル、トドメ刺せ」
「アルさんっ!はいっ!」
いきなり現れたアルにウラルが大して驚かなかったのは、二泊三日一緒に過した経験からだろう。
騎士たちも太めの女の子…おそらく姫も呆然だ。
フォレストドッグとワイルドスネーク、どちらもウラルがトドメを刺した。
「アルさん、来てくれたんですね。有難うございます。前後しましたが、指名依頼出しますので、ダンジョンを出てギルドに行きましょう!姫様もよろしいですね?行きますよ」
ここ数日で逞しくなったらしく、ドロップを拾うのもそこそこに、ウラルがさっさと仕切って促して歩き出した。
「まだ依頼じゃねぇなら、葉野菜仕入れて行っていい?」
フォレストドッグの魔石以外のドロップがランダム葉野菜だった。
ダンジョン産のものの方が質がいいので、アルは機会があればことあるごとにゲットしたいワケだ。
「いいですが、危ない時は助けて下さいね。その分もお支払いしますから」
「了解。…ああ、騎士さんたちには二度目だな。Cランク冒険者のアルだ。ギルドでギルマスからウラルの伝言聞いたんで、こっちに戻ってすぐダンジョンまで来た。ちょっと前にウラルとその従兄弟たちのダンジョン探索体験を手伝ったことがあるから、さっきみたいなやり取りは慣れてるってワケ」
「…はぁ、そうですか。ところで武器をお持ちでないようなら、わたしの予備の武器を…」
女性騎士は先程から、アルが素手で倒してるのが気になったらしいが、誤解している。
「いや、武器は持ってるけど、全然いらねぇだろ」
アルは魔物を全部一発で倒してるのだから。ドロップは風魔法で集め、そのままマジックバックへ。
「…そうですね」
「アルさん、パラゴはいかがでした?」
「スゲェ怖いのがいた。無茶苦茶鳥肌立つヤツ」
「…え、魔物で、ですか?」
「もちろん。鬼婆のラミア。人型の魔物は怖いのが多いって後から聞いたんだけど、そいつもスゲェ怖いセイレーンに会ったことがあって、精神的ダメージからいまだに立ち直ってなかったぞ。おれも話すだけで鳥肌」
「そんなの教えてくれなくていいですよ~。夜に思い出しちゃいそうじゃないですか!」
「誰かに話すと何となく怖さが薄まるような気がしねぇ?」
「しません。でも、アルさん、怖くても倒したんでしょう?そんなに怖いのなら逃げてもいいと思いますけど」
「後を追いかけて来られる方が怖くね?」
「…怖いですね。どこかの階層のボスではなかったんですか?」
「隠し部屋の番人。…お、そっちは頼む」
ウラルの方が魔物に近い時は頼む。
「はい。…隠し部屋って本当にあるんですね。移動してるとかも聞きますが、それはさすがに誇張されて…」
「それマジ。同じ場所に次に行ったらなかった。ギルマスも言ってたから確実。…あれ?ウラル、探知魔法覚えた?」
アルが指示する前にウラルが動いていた。
「ええ、何とか。まだレベルが低いみたいで探知範囲も狭いですが」
「だったらレベル上げて探してみ?結構、浅い階層にも隠し部屋があるから。最初に見付けたの、ここの1階だし」
「それはいいことを聞きました。探知魔法なら探れるってことですね。空洞があるって感じで?」
「ああ。開閉スイッチ周辺に罠が仕掛けられてることもあるから、気を付けろよ。探知魔法で罠も分かると思うけど」
「はい、気を付けます」
アルとウラルはそんなことを話しながらも、サクサクと倒して進んで行く。二人が前衛をやってるおかげで、騎士二人は姫の護衛に集中出来ていた。
そう時間をかけることなく、ダンジョンを出た。
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新作*番外編03 『結婚生活を快適にするベンチ』と『まふぉん』
https://kakuyomu.jp/works/16817330656939142104/episodes/16817330657426354447
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