あとがき
「青春」という単語を見た時、あなたは何をイメージするでしょうか。十人十色の思想に私は興味関心があります。きっと辞書的な言葉の定義に収まらない、それぞれに豊かなビジョンがあることと考えます。
二度とは戻らない「あの」日の「あの」時等、回想する事で何気ない日常だったものがある種の儚さを装備した思い出へと昇華される、そんな一連の働きこそが「青春」と呼ばれるものだと私は考えました。なにわともあれ、現在の自分を作り上げる要素となりましょう。しかし、過去の出来事全てを「青春」と
過去の出来事が現在の心情・情緒に大きく影を落とす「トラウマ」もまた、自分を形成し、未来を育てる要素になるのです。
結局の所「青春」や「トラウマ」と呼ばれるものは振り返ってみて始めて実感できるものであり、それらがどう影響するのかは現在の「自分」の環境や心情によってまた様変わりするのでしょう。特別で、いつも新しい現在の繰り返しが「トラウマ」になるのか「青春」として重宝されるのか……。なんだか結論が出ないような気がしますね。だから私は興味関心があるのかもしれません。
本書はいわゆる「青春小説」として書かれた小説です。そのメインキャラクターの抱える過去のトラウマも視点を変えれば「青春」「ヒューマンドラマ」として多くの人々の目に映ったのだと思います。ものの見方をずらした先にある世界を表現する、そんなパラドックスを描くことが私の中の課題でもあり、この作品は私なりのアンサーです。
そんな本書を読んでくださった読者の方々には敬意を表したいと思います。本書が完結まで辿り付けた理由は読者の方々にありました。かけがえの無い時間をいただき、ただただ嬉しく思います。
本書を読んで何を感じ、どうイメージしたのか。読者の方々の「頭の中」にも私は特別な敬意を表したいと思っています。それらを是非とも「感想」という形でお聞かせいただけたらこの上ない幸せであります。
『雲に飛ぶくすり』を書くにあたり、震災を乗り越え、思い出すことも避けられる中で貴重な話しをしてくれた方。目の前の課題に追われ、憔悴している中でも忌憚のない意見を飛ばしてくれた友人。そして何より、今これをお読みになっている目の前の方へ向けて際限のない感謝を伝えたいです。
本当にありがとうございました。
雲に飛ぶくすり 吉原 陸 @Hazuki86
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