其ノ八 陣痛

「分かりました。奥方様おくがたさまには私の方から、上手くお話ししておきます故、どうぞご安心して、元気な赤子あかごを産んで下さいませ。」


 初島はつしま様がこう仰ると、

「ほんに、この様な事まで。初島はつしま様には大変ご迷惑をお掛け致します。宜しゅうお頼み申し上げます。」

 安子様は畳すれすれまで、初島はつしま様に丁寧に頭をお下げになられました。


 その五日後のお昼過ぎごろから、安子様は四半刻しはんとき(約30分)おきに、月経の一番重い時の様な痛みを腹部にお感じになられておりました。安子様はこれが初めての産み月ではない為、この痛みが陣痛と言うものだと御存知でしたので、寺子屋から戻ったばかりの太郎君たろうぎみと花子様を、ご近所の奥方様おくがたさまのお屋敷に居る初島様はつしまさまにお預けになる為、時折来る痛みをこらえながら、子供達にお支度をさせておりました。

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