其ノ十七 匙
長い夜がようやっと明けました。お庭で飼って居る早起きの白犬のハチがお腹を空かせて、くうんと鳴く声で
安子様はすでにお目覚めになって居りましたが、やはり病み上がりのため視点が合わずぼうっとして、すすきみみずくの置いてある辺りを、横になったまま見るともなく眺めていらっしゃいました。
「ああ、大分顔色が良くなりましたね。具合は如何ですか? この甘酒は召し上がれそうですか?」
と優しくお尋ねになり、安子様が静かに頷くと、
「あ、このすすきみみずく、御安産のお守りに一つ持ってお行きなさい。お産で苦しい時に、これを見れば少しは心休まる事でしょう。」
「そうそう、私は安子様のご主人の所に、事の次第をお伝えに行かなければならなかったのだわ。先生を起こしますから、安子様はそこで静かに寝ていらっしゃって下さいね。動いてはいけませんよ。」
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