其ノ二十一 百花繚乱

「では、中へ。」


 方々の輪のまん中に、御組総取締おくみそうとりしまり(クラス委員長)の春日かすが様、御右筆ごゆうひつ(書記)の江島えじま様、御錠口おじょうぐち瀧山たきやま様の御三方が入られます。


 瀧山たきやま様と江島えじま様は御搔取おかいとり(打掛)を腰巻こしまきになさり、お袖を紐で括り、瀧山たきやま様は江島えじま様より節竹筒ふしたけづつ矢筒やづつささはいしお預かりすると、矢筒やづつより取り出だしたる一本の吹き矢を節竹筒ふしたけづつうやうやしく御装填ごそうてんなさり、江島えじま様は瀧山たきやま様のひたい鉢巻はちまきにて目隠しをされました。


江島えじま、御回しなされ。わらわが良きところでお声がけする。」

 との春日かすが様のお言葉に、

「はっ。」

 と江島えじま様がお返事なさると、瀧山たきやま様のお身体をくるくるとお回しになります。お母御ははごの方々の御打掛おうちかけふき(裾部分)は、ひわ色、青藤あおふじ蘇芳すおう鴇色ときいろ紅梅こうばい色等、色とりどりに取り囲み、まさに百花繚乱ひゃっかりょうらん、見応えのあるものに御座います。

 皆さまお子がいらっしゃるとは言え、たれもがうら若くお美しく、まさに華の盛りに御座いましょう。

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