物語の結末について考える(有益度★★★★)

 近況ノートとTwitterには書いたんですけど、『火蛾』のサイン本を入手したんですよ。

 イスラム教ミステリーという他に見たことないジャンルの作品なんですが、文体から台詞から宗教知識の出し方から全部カッコいいんですよね。

 これがノベルスで刊行されてからかれこれ23年もの間、文庫化してなかったんですが、ついに出たんですねぇ。

 しかもサイン本が出るというニュースを見て、これは流石にサイン本を入手しないわけにはいかないと走ったわけです。

 買えて正直ホッとしました。


 で、今日の本題である『物語の結末について考える』に繋がるんですが、『火蛾』という作品はラストが実に秀逸なんですね。

 私、気持ちいいラストの小説大好きでして。

 こんなん書きたいわぁと常々思っている次第。

 拙作をお読みいただいている皆さんは「なるほどね」と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、『夜道を歩く時、彼女が隣にいる気がしてならない』はラスト1ページのためにその他があるような作りになっていますし、作品のラストの表現に対しては並々ならぬ気合が入っているんですよね。

 先日完結した『あなたはイカを信じますか?』もラストはかなり頑張ってまして、伏線回収・どんでん返しをやりつつ、またエモい感じに仕上がっておりますので、是非お読みいただきたいんですね。

 とりあえずURL貼っておきます。


https://kakuyomu.jp/works/16817330656282560160


 で、今日の本題である物語の結末について考えていきたいと思います。

 シリーズ化前提のライトノベルと基本的に単巻の一般文芸とでは考え方は違うとは思いますが、基本的には後者をベースとします。

 あと物語構造というより最後の1ページに何を書くか、というところに主眼を置いています。


 物語の終わらせ方って幾つかありますよね。別に調べたりしてないですが、パッと思いついたものに対してつらつらと思ったことを書いていきます。


・めでたしめでたし

 みんな幸せに暮らしましたとさ的なやつです。これがやっぱり良いというか基本的にはこれが来る前提でみんな読むとは思いますよね。鉄板というか変に捻らなくてもちゃんと主人公が目的を達成してハッピーエンドに勝るものってあるんですかね。これをベタだと思って避けるあまり意味わからない結末になったり、超展開で着地に失敗して骨折するような失敗は何度かしています。

 捻るにしてもまずはどうしたら最善の結果になるのかな?ということは考えています。

 話の締めの直後なのか数年後なのかわからないですがとにかく主人公が報われていることが明示されているのはホッとします。


・ループ

 最後のページから、冒頭に繋がるウロボロス的なやつですね。そんなに数はない気がします。ごく稀に遭遇しますが、正直パズル的な上手さが先に立つので効果的に使うのは難しいですよね。また最初からやり直しか……という徒労感がどうしても生まれてしまいますからね。最初に戻ることにどう意味を持たせるのかを決めずになんとなくでやるとリスキーだと思います。


・結末書かないタイプ

 オチがないってやつです。私、エンタメの子なのでこれ結構苦手でして。あえて結末を描かずに読者の想像に委ねるというのは良いんですよ。謎が何もかも解決する必要もないと思ってます。その前までにちゃんと物事に一応でも決着がついていれば。本当に何も解決しないとか有耶無耶にされるのはそれまでに読んできたことの意味を考えるとどうなのかなぁと。

 漫才とかコントが好きで、一つのエピソードをコント台本に近いイメージで書いているというのもあるかもしれません。会話の途中とか思わせぶりなフリだけあってふわっと終わっていくっていうのに向いてない書き方なんでしょうね。

 途中途中の何気ない日常エピソードとかは読者に委ねてダイジェストにしちゃう一方で、オチの部分は書いた方がいいかなぁ派です。


・予告タイプ

 これも色々パターンがありますが、『古畑任三郎』みたいに冒頭で犯人明かした上でどうやって犯人を追い詰めるのかを描くのがメジャーですかね。

 拙作『夜道を歩く時、彼女が隣にいる気がしてならない』はタイトル予告タイプです。タイトルが振りになってます。このタイトルがどこで出てくるでしょうか?っていうやつで、出てきた時に「おー」って思ってもらいたいですね。

 最終章の章題でタイトル使うのとかもいいですよね。アニメとかでよくあるやつ。

 でもこれハードルが上がっちゃうので、予告箇所が出てきた時にそれまでの積み重ねが集約されたりカタルシスがないと信じられないくらいスベるリスクがあるので、自信がないのにちょっとオシャレだなってやると怪我しそうでもあります。

 これの良い書き方があると思っているんですが、先にタイトルとか予告を考えるんじゃなくて、長編を長く書いていると最後に「これしかない」ってラストが出てくる時あるじゃないですか? それを頭に持ってくるととても良い感じに仕上がる実感があります。このパターンでやろうっていうんじゃなくて、結果的にそういうタイトルになった、というのが自分の中での理想です。

 ちなみに『よみかの』は最初期は『彼女は夜の彼方』というタイトルだったんですが、ラストまで書きあがって『夜道を歩く時、彼女が隣にいる気がしてならない』になったという経緯があります。


・どんでん返し系

 前の方で挙げた『あなたはイカを信じますか?』はちょっとしたどんでん返しタイプです。最後の最後の主人公の一言で作品全体の見え方が変わるようなギミック仕込むタイプです。これ上手いこといくと気持ちいいですよね。読者に伝わってなかったりスベってたらと思うと手が震えますが。イカはオカルトサークルが神秘体験をきっかけにカルト教団化していって、なんやかんやあるお話なんですが、サークル内に一人嘘つきがいて、それが明らかになると作品全体がその嘘吐き視点でまた別のお話に読めるようになっています。

 最初から「嘘吐きは誰だ」的な造りにしてないので、本筋ではないんですが、ちょっとしたサプライズで、もう1回読んでPVを回してくれたら嬉しいなってことです。広告非表示ですし、サポートも受け取らない設定にしているのでただ嬉しいだけです。



 という感じで書いてみましたが、例によって自分はこう思って、こういう選択をしたということで創作論なんてものではないんですが、何かしらのヒントになればいいなと思います。

 他にも色々あるなーと思いつつ、取り上げてみたかったパターンについて書いてみました。

 今日は珍しく宣伝なしです。長々書いて疲れたので。

 ではでは。

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