〖第四話 転生したら落ちぶれた飼い猫でした〗



俺が転生して、一年も経って無い頃の話だ


その日、パーティが開かれるとかで人間は広間に集まっていたけど、俺は広間の端で寝たフリをしていた


パーティなんてもんは酒でも呑みまくって

わーわーやるんかなとでも思ってたさ


ところが、パーティの終盤に一人の女性が

舞台に上がらされるや部屋の電気が消され、

舞台だけに灯りがついた


そして、よく分からんデブが舞台に上がるや

こう言った「お前は勘当だ」ってね


もうパーティ会場はもう大爆笑なもんで

これはコントかな?と思ったんだけど勘当を

言い渡された女性がすげぇ泣いてるもんでこれマジじゃんかって気づいたんよ


で、その日から舞台に上がらされた女性は

城で見かけなくなった。ま、当たり前だけどな。俺はと言えば城に残ってそこそこに暮らしていた。貰った餌を食い、わざとらしく虫とかを掴まえ、時には人間に媚びを売って可愛がられたり……


でも何か違うなぁと感じ、それから数ヶ月後俺は城を家出した


野良猫になるのも悪く無いかなと思っていたんだが、人生何があるか分からんものでカラスから逃げた先で忍び込んだ家がさっきの城から居なくなった女性の家だったらしい


で、何だかんだで女性と暮らす事になったわけよ


女性の名はユリカと言うらしい。顔立ちは中々悪くなかったし何より乳がデカい。時たま吸いたくなるぐらいだった


しかし、この家での暮らしは大変でな


餌は野菜の切れ端しか貰えないし、ユリカは

いつも深夜に帰ってくるから構ってもらえや

しない。その上、ここらを支配している鼠は強い上にチームを組んでやがり、人間の邪魔より猫を虐める事が生きがいらしい


俺も来たばかりの頃は散々な目にあった


だが、負けてはいられんし俺はいがみ合っていた雄猫二匹を和解させ、俺と同盟を組ませた


そうして、鼠さんチームは解散。弱い鼠はくたばり、強かった鼠も他の地域へ逃げた


これで平穏な暮らしが出来た……のだが

またしても俺は虚しくなってしまった。

俺のやりたかった事ってこんな事が?と思った矢先にまた俺は家出した


そうして、また城に帰ったわけだが

ここで俺はユリカが勘当された理由を知ってしまった。デブによれば「アイツは頭がいいから奴隷にはならず城を支配するから」らしい。それを聞いてしまってからは何だか無気力に生活する……予定だったのだが更に問題が発生した。デブの妻が連れてきた犬がどうしょも無い馬鹿で、俺を友達だと思ってるのはまだいいとして、一日中遊びを要求してくる。しかも、奴は大型犬猫の俺とは体力が全然違うのだ


正直、鼠との戦いの方がまだマシだった


しかも、俺が貰える餌は犬の余りか残飯かの

二択。玉ねぎも混じってやがる


耐えきれなくなった俺はデブの寝室に侵入し、耳元で思いっきり「にゃー!」と叫んでやったさ!飛び起きたデブの顔も引っ掻いてやった


当然、城に居られるわけも無くまた俺は放浪の旅に出ようかと思ったのだが


やはり、ユリカが心配になってしまい


ユリカの家に帰ったんよ


そしたら、ユリカは大泣きで俺を抱き締めた

ふわっふわのおっぱいでな、ふわっふわだぜ


で、今度こそユリカと暮らす事になる筈だったが俺の知らない内に猫が一匹増えていた

そいつの名は"マーリ"と名付けたらしい。

二人で暮らしたかったのだが、まあいいかと

思い一人と二匹で暮らし始めたのだった


━━━━━━━━━━━━━━━


現在


「にゃー!!(ひー!鼠ー!助けてぇー!!)」


一匹の猫が太った鼠に追いかけられていた


その様子を眺めていた別の猫も呆れながら

のそりと動き出した


「にゃあ?(おい、女の子を虐めるのは良くないんじゃ

無いか?)」

「チュー!(猫は鼠の敵!虐めて何が悪い!)」

「ふにゃ…… (へー理解わかってんじゃん)」


猫は口を開け、ギランと輝く牙を見せた


「チッ?!チュゥ!?(え!?その牙まさか

噂のアイツ!?)」

「にゃ(そ、何匹も鼠を噛み殺したあね猫でーす)」


「チューッ!!!(逃げろーっ!!!)


鼠は凄まじい勢いで逃げて行った


「ご、ごめん……助けてもらって」

「いいさ別に。こうなったのも俺が悪いんだしさ」

「へ?」


俺はマーリにここらの鼠がなぜ強くなったかを説明した


「そんな事あるんだ、地方から強い鼠があなた目当てに来るなんて」

「ああ、せめてあの二匹が去勢されてなきゃ

なぁ……」

「二匹?」

「バリトンとガミラだよ。お前も知ってんだろ?」

「えぇ!?あの気持ち悪い雄なんだか雌なんだか分かんない二匹が?」

「そ、昔は俺とタメを張るぐらい強かった。

今は戦いなんかしないけどな」


「ま、だから俺もいつまで強いままでいられるか分からんしお前さんも強くならんとな」

「うぐぅ……」


と、言ってもマーリはか弱い女の子、

強くなろうとしたって無理がある。だから

弱いまんまでもいいかと俺は思ってる


「そんな顔すんな。俺はお前だけは何があっても守ってやっからよ」

「うっ……出来ればそのセリフ雄のこから聞きたかった。まさか雌のあなたが言うとは」

「うるせえな。一度言ってみたかったんだよ

!」


「あら?また二匹でお話ししてるの?ほんとに二匹は仲が良いわね。女の子同士だからかしら」

「にゃー!(お前はいつも一言余計なんだよ!)」

「ふにゃん……(仲良しなんて…恥ずかしいです)」


今日も俺は二匹で野菜の切れ端を分け合って食っている


いつまでこんな生活が続くのだろうか


〖第四話 転生したら落ちぶれた飼い主でした〗



おわり




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SKS(ショートキャットストーリー) 湧音砂音 @mtmmumet555

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