第16話 ダンジョンの設備を整えよう

 

 ここはダンジョンなのだ、いつ敵が襲撃に来てもおかしくない。

 俺たちは防衛を整えなければならない。

 まあ、何の罪もない冒険者を殺すようなことはしないけどな。

 だが、やってきたのがあのゴーヨックたちなら容赦はしない。

 

 だが、それ以前に、俺はこのダンジョンをよりよい環境にしたい。

 できれば俺は、このダンジョンに引きこもって、惰眠を貪って暮らしたいのだからな。

 住むとなれば、ダンジョンももっといろいろと設備を整えなければ。


「よしイストワーリア。これまでに、DPはどれくらい溜まった?」

「今溜まっているのは、3000DPですね」


 掘削で手に入れた魔石を分解して、ようやく3000DPを溜めたのだ。


「この3000DPをなにに使うかだな……よし、まずは居住スペースを作る」

「居住スペースですか!」

「そうだ、俺やイストワーリアが安全に暮らせる場所だ。安全な住居を作っておけば、俺も安心してダンジョン運営に集中できる」

「さすがはマスター。お優しいです」

 

 俺はダンジョンメニューから、【ダンジョン施設】の項目を選ぶ。


「えーっと、居住区の項目は……あった」


 

――――――――――――――――


寝室   300DP

浴室   500DP

台所   600DP

リビング 700DP


――――――――――――――――



「うーん、それぞれ1部屋ずつ建てても、2100DPか……これだと900しか余らないな……」


 できることなら、寝室は2つくらい欲しい。

 イストワーリアと同じ部屋で寝るわけにもいかないだろう。

 

「寝室は2つほしいんだけどなぁ……」

「え? じゃあ寝室は一部屋でいいんじゃないですか?」


 などと、イストワーリアが言い出した。


「は……?」

「わ、私は……別に、マスターと一緒の部屋でもいい、ですよ……? 一緒に寝れば、スペースとポイントの節約になっていいんじゃないかな? …………なんて……」

「へ……?」


 まさかの事態だ。

 イストワーリアからお許しが出た。

 まあ、俺としてはイストワーリアと同じ部屋で寝るのは、平気だ。

 イストワーリアはあくまで部下だからな。

 いや、嘘だ……。

 こんな可愛い女の子と同じ部屋で寝るだなんて……。

 

「マスターは私のすべてです。なので、マスターにも私のすべてをささげるつもりです。駄目ですか……?」


 イストワーリアは上目遣いで、頬を赤く染めてきいてきる。

 うぅ……そんなことを言われたら……俺もまんざらではない。


「だ、ダメじゃないですぅ……」

「なら、同じ部屋で大丈夫ですね!」


 ということで、寝室は1つでということになった。


 俺は貴重な3000DPの中から、2100DPを消費し、それぞれの部屋を設置した。

 さっそく、殺風景なダンジョンの中に、部屋が作られる。


 ――ボン、ボン、ボン!


「おお! これがダンジョンの改造か! ポイントを使うだけで勝手に建築されるとは……なんとも簡単だ!」

 

 指先一つでいろいろ改造できる。

 どういう仕組みかは知らないが、ダンジョンってのはすごいな……。

 冒険者のころは魔物側の事情なんてまったく気にしてなかったから、新鮮な驚きだ。


「残った900DPは、どうするんです?」

「待ってろ、これはだな……こいつに使う――」



 ◆

 

 

「よしゴブリン君たち、集まりたまえ」


 俺はゴブリンたちを一か所に集めた。

 毎日文句も言わずにダンジョンを掘り堀りしてくれている彼らには、頭が上がらない。

 そんな彼らをねぎらってやるのも、マスターである俺の役目だ。

 ま、本当の目的はそうじゃない。


「えー、君たちは大変よくやってくれている。君たちのおかげで、我がダンジョンはどんどん広がっているし、DPも順調に溜まってきている」


 だが、まだまだダンジョンの中はもぬけの殻だ。

 ダンジョンをもっと発展させるには、さらなるDPが必要だ。

 DPを得るには冒険者を呼び込むのが一番だが、そのためには強力なダンジョンを用意する必要がある。

 うっかり強力な冒険者を呼び込んでしまうと、ダンジョンコアを破壊され、こっちがゲームオーバーだ。


 で、その強力なダンジョンのためにはDPが必要、というなんとももどかしい作りになっている。

 俺のダンジョンはまだまだ発展途上というわけだ。

 さすがに魔石の変換だけではDPの溜まりは遅い。

 だがこれをさらに効率化することができる。


「えーっと……」


 俺はダンジョンメニューを開いて、【施設】の項目を選ぶ。

 その中から、酒場を選択だ。


――――――――


酒場 900DP


――――――――


「ちょっと高いが奮発だ。このDPも、ゴブリンたちが稼いだものだしな!」

「ありがとうございますマスター、ゴブ」


 そんなこんなで、我がダンジョンに酒場を設置した。

 酒場にはボーナスモンスターとして、【ドラキュラマスター】がついてくる。

 マスターといっても、お酒を入れる酒場のマスターという意味で、ドラキュラの王的な意味ではないようだ。

 ドラキュラマスターには戦闘能力は期待できない。


 ――ボン!


「お初にお目にかかります、ドラキュラマスターでございます!」

「おお! よろしくな」


 さっそく、ダンジョンに酒場とドラキュラマスターが現れる。

 酒場のカウンター越しに、ドラキュラマスターと話をする。


「マスター、俺にも酒を頼む」

「かしこまりました、マイマスター」


 そう言うと、ドラキュラマスターは俺とゴブリンたちの分の酒を用意した。


「でもあれだな……俺もマスターでドラキュラマスターもマスターだと、ややこしいな」

「そうですね……確かにややこしいゴブ」


 酒を飲みながら、俺とゴブ吉が話していると――。


「も、申し訳ございませんマイマスター! わたくしがこんな名前をしているばかりに……種族もろとも根絶やしにしてくださってかまいません!」


 とドラキュラマスターが涙目になって謝罪した。

 なんだコイツ……。

 けっこう特徴的なキャラだな、とびっくりする。

 声も甲高く、話し方もどこか女性的だ。


「いやいや根絶やしになんかしないから……。そうだな、お前にも固有の名前をつけてやるか」

「本当ですかマスター! ありがたいことです! 身に余る光栄!」

「そうだな……お前、変な奴だしキュリアスはどうだ?」

「きゅ! キュリアスですか! わたくし感動いたしました! マスターのネーミングセンスは魔王様級です! わたくしキュリアス、マスターからいただいた名に恥じぬよう、精一杯この酒場を運営していきます所存です!」


 なんだか大げさな奴だな……。

 まあ、やる気があるのはいいことだ。


「ゴブゴブ! マスター! なんだかこのお酒を飲んだら、力が湧いてきましたゴブ!」


 ゴブ蔵が空になったグラスを見せながら、立ち上がる。


「そうだろ? 疲れたさいにはここで酒を飲むといい。一杯あたり5DPかかるが、それでもお前たちの稼ぎのほうが多いからな、遠慮せずに飲んでくれ」


 これでさらにDPが溜まるのが早くなるはずだ。

 酒場には体力回復と、士気アップの効果があるからな。


「おお! さすがはマスターです、太っ腹ゴブ!」

「さあ、さっそく仕事にかかるゴブ!」

「マスターのために頑張るゴブ!」


 俺の狙い通り、酒を飲んだゴブリンたちはやる気に満ちた顔で、酒場を出ていった。


「ようし、完ぺきだな。キュリアス、お前の酒美味しかったよ。また来るから、よろしくなー」


 俺も疲れが癒えた。

 まだまだダンジョンには足りなものがたくさんある。

 これからが楽しい時間だ。

 ダンジョンの試行錯誤ほど楽しいことはない!


「マスターのお力になれて、感激の極みでございますうううう!!!!」


 このドラキュラ、かなりうっとおしい……。

 しばらくは酒場には来ないかも……。



 

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名前 シン・ラトップ

職業 罠師(サポート)

サブ職業 ダンジョンマスター

男 16歳


レベル  50

体力   3615

魔力   1925

攻撃力  2442

防御力  2354

魔法攻撃 2598

魔法耐性 2513

敏捷   2522

運    2673


スキル一覧

・針山トラップ

・トラバサミトラップ

・経験値貯蓄トラップ

・掘削トラップ

・トラップドア

・毒餌トラップ

・スライム床 

・ダミートラップ

・壁トラップ

・ダンジョンコア制御トラップ

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◆ダンジョン情報

 

 イストワーリア×1

 スライム×10

 ゴブリンエリート×5

 ドラキュラマスター×1


 DP 0

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